木造住宅の耐用年数とは寿命のこと?初心者でもわかりやすい基礎知識
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「木造住宅の寿命は30年」と一般的に言われていており、寿命の短さに驚く人も多いかと思います。
この背景には、木造住宅の耐用年数が22年であることが関係しています。
本記事では、建物の寿命と耐用年数の基礎知識について解説していきます。
目次
木造住宅の寿命は30年って本当?
不動産市場で住宅購入を検討しているならば、「長いローンを組み購入するマイホームが、いかにできるだけ長く快適に住めるか」は、重要なポイントになると思います。
日本の木造住宅の寿命は30年と一般的に言われています。
想定していたよりも短い寿命から、木造住宅に長く住めないんだ不安を覚える方も多いかと思います。
しかし、木造住宅の寿命とされる「30年」という数字は、寿命だけでなく、寿命以外の理由で解体された木造住宅の築年数を平均したものから算出されています。
では、なぜ木造住宅の寿命前の築30年で取り壊されるかというと、耐用年数と日本の文化が関係しています。
耐用年数は減価償却資産で利用できる年数のこと
住宅には、構造ごとに耐用年数が決まっており、木造住宅の耐用年数は22年です。
耐用年数は、正式には法的耐用年数といい「減価償却資産が利用できる年数」のことを指し、国が建物の構造や用途に合わせて年数を定めています。
減価償却資産とは、時間の経過と共に価値が減っていく資産のことを指し、法定耐用年数が過ぎると資産価値がゼロとなります。
減価償却資産は、住宅だけでなく車やパソコン、工業用機械などに設定されています。
つまり、木造住宅の耐用年数22年は、減価償却の計算に使われる年数であり、建物の寿命を表す年数ではありません。
設備の耐用年数は30年
建物の耐用年数だけでなく、家の中の設備にも耐用年数はあります。
キッチンやお風呂、トイレなどの水回りや、ガスや電気の設備、暖房器具やエアコンなどの空調機器は、建物の耐用年数より短いものがほとんどです。
給排水、ガス、衛生設備、電気設備の法定耐用年数は15年です。
水回りの設備の交換目安も20~30年といわれており、木造住宅の法定耐用年数22年より短いため、住宅に長く住み続けるためには一度は取り換えを考える必要がでてきます。
できるだけ長く安全に設備を使うためには、日々のメンテナンスを欠かさないことと、もしくはリフォームを行い使いやすい安全なものに取替る必要があります。
日本には同じ住宅に住み続ける文化がない
日本には、昔から同じ住宅に住み続けていくという文化がありません。
家を建てて住み始めて30年ほどすると、家族構成やライフスタイルに変化がでてくるため、その家での生活に不便さを感じ始めます。
不便さを解消し暮らしやすくするため、リフォームや家の建て替えを選択する人が多く、現状の家を長持ちさせるということについて、あまり重要視されていませんでした。
また、まだ住宅が住める状態にあっても、建て替え工事に踏み切る人が多くいます。
柱や梁など構造上の問題で思った通りのリフォームが難しかったり、建物の設備や骨組みの劣化が激しいため新しく建て替える必要がある、など、想定よりリフォームの費用がかさむことから、「古い家を直すのではなく、いっそ新築にしよう」と考えるからからです。
建物の構造別耐用年数
建物の耐用年数は、「どのような構造で建築するのか」と「どのように建物を使うのか」によって違います。
建物を住宅用として使う場合、単純な作りとなる木造や木骨は耐用年数が短く、頑丈な鉄筋コンクリート造や金属造の建物になると耐用年数が長くなります。
構造 | 用途 | 耐用年数 |
---|---|---|
木造・合成樹脂造 | 住宅用 | 22 |
木骨モルタル造 | 20 | |
鉄筋コンクリート造・鉄骨コンクリート造 | 47 | |
れんが造・石造・ブロック造 | 38 | |
金属造(骨格材の肉厚が4mmを超えるもの) | 34 |
<参考:国税庁 耐用年数(建物/建物附属設備)>
また、建物の構造が同じ木造であっても、建物の使用用途が変われば耐用年数は違ってきます。
一般的に、水や油など建物にダメージを与える使用用途であればあるほど、耐用年数が短くなります。
この傾向は、木造だけでなく鉄筋コンクリート造やれんが造などの他の建築構造であっても同じです。
工場用・倉庫用の建物の耐用年数は短く、事務所用のものの耐用年数が長くなります。
建物を木造で建築した場合、用途別の耐用年数は以下のようになります。
構造 | 用途 | 耐用年数 |
---|---|---|
木造・合成樹脂造 | 事務所用 | 24 |
住宅用・店舗用 | 22 | |
飲食店用 | 20 | |
旅館用・ホテル用・病院用・車庫用 | 17 | |
公衆浴場用 | 12 | |
工場用・倉庫用(一般用) | 15 |
<参考:国税庁 耐用年数(建物/建物附属設備)>
木造住宅の寿命は使われ方と状態によって変わる
耐用年数は、減価償却資産として計上できる期間です。
木造住宅は、耐用年数の22年を超えたからといっても、家の寿命がきたわけではないため、住み続けることができます。
しかし、建物は年々劣化していくので、いずれ寿命はやってきます。
建物の寿命は、使われ方と立地条件によって変わるため、同じハウスメーカーが同じ作りの木造住宅を作ったとしても、寿命はそれぞれ違ってきます。
木造の寿命は、物理的耐用年数とメンテナンスで大きく変わります。
物理的耐用年数とは
物理的耐用年数は、建物の構造の仕組みや建物の材質が品質保持できる期間のことをいいます。
物理的耐用年数が過ぎたら、満足に使えなくなり処分する必要がでてきます。
建物も物理的または化学的原因によって劣化していくため、物理的耐用年数がくるといずれ使用できなくなります。
木造住宅は、立地や建物のメンテナンスによって物理的耐用年数に大きな差がでます。
木造住宅の物理的耐用年数の延長に、日々のメンテナンスや立地が重要であることは、日本最古の木造建築(創建607年)の法隆寺を始め、日本に古くから存在する数多の寺院が姿を数百年変えていないことから分かります。
木造住宅に適切な立地とメンテナンスが施されていれば、木造住宅に百年以上住み続けることができるのです。
木造住宅を新しく建てて長く住み続ける予定があるのであれば、建築前に立地条件をこだわりましょう。
木造住宅の素材である木材は湿気を好まないため、水はけが悪く湿気が多い土地をはおすすめしません。
木材だけでなく、シロアリ被害に見舞われる可能性が高まるからです。
建てる前に、どのような土地なのかを十分に調査しましょう。
木造住宅に長く住むためにはメンテナンスが大事
木造住宅に長く住み続けるためには、日々のメンテナンスが大事です。
家々によって、必要な補修や掃除は違うため、その家々にあった日々の対策とメンテナンスが必要です。
例えば、直射日光があたる壁面や窓枠のパッキンは当たらない面に比べ劣化が早い傾向にあり、家の近くに木や台風が多い地域であれば雨どいに枯れ葉がつまるため、定期的な掃除が必須です。
とはいえ、一般人が行う建物のメンテナンスには限界があるため、定期的に専門家や施工会社の点検を受けることをおすすめします。
家についての専門家は、現在の不具合だけでなく将来の懸念点についていも指摘してくれます。
定期的に検査を受けることは、修繕が少ない状態での改修で済む可能性が高くなるため、結果的には修繕費用を節約することにもつながります。
日本では、近年、住宅を建て替えるのではなく、リフォームやリノベーションを行う業者が増え、リフォーム業界のサービスが充実してきました。
古い建物でも、快適な安全な住まいを確保できるようになってきました。
木造住宅を売買するなら耐用年数がポイント
木造住宅を売買するなら、耐用年数がポイントになってきます。
中古の木造住宅(物件)の購入を考えているならば、あとどれくらい法定耐用年数と物理的耐用年数が残っているのか、住む前だけでなく、住み始めてからの建物の修繕費がどれくらいかかるのか、耐震基準が適合しているかを確認しましょう。
購入を検討している木造住宅で軽微の修繕が放置されている場合、注意が必要です。
なぜなら、居住者がこまめに手入れを行っていない可能性が高く、実際に住み始めてから、想定していたより住宅に傷みがでてくることもあるからです。
そして、特に老後の暮らしを想定しているなら、段差や間口などのバリアフリーにするリフォームにかかる費用も考慮しておくと良いでしょう。
また、いずれ木造住宅の売却を検討しているならば、耐用年数があとどれくらいあるのか、現在の住宅の価値がどれくらいあるのか、売却予定時にはどれくらいの価値になるのかを調べておきましょう。
不動産は年月が経つにつれ、資産価値が下がっていくものです。
「いつ売却するとお得なのか」を計画を立ててから行うことをおすすめします。
木造住宅の耐用年数と住み続けられる年数は違う
木造住宅の耐用年数は22年ですが、耐用年数は減価償却資産の期間を表すものであって、建物に住めなくなる年数ではありません。
木造住宅は、日々のメンテナンスや設備の取り換えなどのリフォームを適切に行えば、長く住み続けることができます。
木造住宅の購入を検討している方は、耐用年数や立地条件を確認してから購入するようにしましょう。