能とは?狂言とあわせて能楽の基本知識をわかりやすく紹介

日本の伝統芸能を代表する能と狂言。

言葉としては知っていても、実際には観たことがないという方も多いのではないでしょうか。

この記事では能と狂言についてわかりやすくまとめています。

伝統芸能に関心がある方もない方も、一般教養のひとつとして、ぜひご覧ください。

能とは

能とは

能とは、謡(うたい。声楽のこと)と囃子(はやし。楽器演奏のこと)、そして舞の3つから成る古典芸能です。

室町時代に観阿弥(かんあみ)と世阿弥(ぜあみ)の親子によって大成され、その後、ほとんど形を変えることなく現在まで続いています。

能は、足利義満や豊臣秀吉などをはじめとする武家に愛され、江戸時代には幕府の式楽にもなりました。

なお、能は「猿楽(さるがく)」から発展した演劇です。

猿楽は、日本の古代・中世にあった芸能で、こっけいな動作や曲芸を主とする内容が、民衆の中で広まりました。

後々に、歌や舞などが演じられるようになり、能楽へと発展していきます。

また、同じ猿楽から発展した演劇に「狂言(きょうげん)」があります。

能と狂言を合わせて「能楽(のうがく)」と総称されます。

能楽は、2001年にユネスコ無形文化遺産にも指定され、世界的にも名を知られるようになりました。

狂言とは

狂言とは

能は、死者や神、僧侶などが繰り広げるシリアスな物語であることが多いですが、同じ猿楽から発展した「狂言」は、主人と家来、舅と婿などの身近な人物が繰り広げる喜悲劇です。

狂言は、歴史などの知識がなくても楽しめる点が魅力です。

また、能では、性別や年齢、亡霊などの役によって、面(能面)を装着して演じます。

一方、狂言では面を使わないことが一般的です。

ただし、動物や神、鬼などを演じるときには、面を使うこともあります。

能の合間に演じられる間狂言

狂言だけで独立した演目も多数あります。

たとえば「附子(ぶす)」は、主人と使用人たちが繰り広げる一本物のコメディーです。

しかし、狂言の中には、能の前半と後半をつなぐ役割を果たすものもあります。

狂言ならではの豊かな表現力で、能のストーリーをかみ砕いて説明し、お客さんたちが理解しやすいように努めます。

なお、能の合間に演じられる狂言を「間狂言(あいきょうげん)」、一本物の狂言を「本狂言(ほんきょうげん)」と区別することもあります。

能・狂言(能楽)の楽しみ方!

能・狂言の楽しみ方

能や狂言というと「堅苦しい」というイメージがありますが、そのようなことはありません。

もちろん、演者が演じているときは音を立てずに静かに鑑賞することが大切ですが、何も能楽に限ったことではなく、オペラやミュージカルを鑑賞するときも同様です。

ただし、言葉づかいなどは昔のままのため、ストーリーを詳しく知ってから観に行くほうが格段に楽しめます。

室町時代や江戸時代の人々にとっては知っていて当たり前の話でも、現代に生きるわたしたちには知らないことも多々あります。

あらすじだけではなく、話の細部や登場人物、人物相関を勉強してから行くようにしましょう。

能・狂言(能楽)の舞台や道具について

能の舞台や道具について

能や狂言の舞台は、約6m四方の板張りで、四隅に柱があり、客側から見て左奥にある橋掛り(はしがかり)と呼ばれる渡り廊下とつながっています。

また、舞台全体に屋根があり、天候に関係なく演じられるように工夫されています。

舞台の正面奥には、鏡板(かがみいた)と呼ばれる板張りの壁があり、老松が描かれています。

「老松には神が宿る」と言われているため、神聖な舞を踊る舞台にはふさわしいと言えるでしょう。

また、老松を飾るのは、奈良県の春日大社にある松の前で、能を演じて神に奉納したことに由来するとも言われています。

舞台装置はないが小道具は多い

小道具について

能や狂言では、舞台装置や大掛かりな道具は使いません。

心情はすべて謡と舞で表現するため、シンプルな舞台設定が基本です。

しかし、小道具は多数あります。

たとえば、松の木などを立てて舞台上に配置する「立木台(たちきだい)」や、貴人が座る「一畳台(いちじょうだい)」。

その他にも、鐘や山、宮、車などの演目ごとに決められた小道具があり、必要に応じて置かれます。

また、演者が手に持つ小道具もバラエティ豊かです。

杖や竿、文、扇、羽団扇、長刀、太刀、鎌、手籠、法具など、さまざまな小道具がストーリーを分かりやすくしてくれます。

能・狂言(能楽)には魅力的なキャラクターが登場する

能・狂言(能楽)には魅力的なキャラクターが登場する

能では、主役のことを「シテ」と呼びます。

演目によっては、前半と後半の主役が異なることがあり、その場合は「前シテ(まえして)」「後シテ(のちして)」と呼び分けます。

シテを専門に演じる演者を「シテ方(してかた)」と言い、流派によって演じ方が異なります。

シテの従者や準主役は「シテツレ」と呼ばれます。

シテの相手を「ワキ」と呼び、通常は現実の男性役のため、能面をつけません。

ワキに従者がいるときは「ワキツレ」と呼び、ワキと同様「ワキ方」が演じます。

能は、前半と後半の二部構成になっていることが多く、前半終了後に「アイ(間)」と呼ばれる演者が前半のストーリーをまとめ、後半に引き継ぎます。

村人や役人の姿をしていることが多く、シテやワキとは関係のない傍観者としての立場で、ストーリーを語ります。

狂言には特定の人物は出てこない

源義経や武蔵坊弁慶、六条御息所などの具体的な人物(創作を含む)が出てくることが多い能とは異なり、狂言では山伏や太郎冠者(「使用人その1」程度の意味)、大名、主人などの肩書のみで話が進みます。

なお、能と同じく主役を演じる演者を「シテ」と呼び、シテの相手方を「アド」と呼びます。

いずれも特定の人物や名前がなく、職業や立場だけで話が進みます。

能・狂言(能楽)を鑑賞するにはどうすればいい?

能・狂言(能楽)を鑑賞するには

能や狂言は、能楽堂(のうがくどう)で観劇できます。

能楽堂は全国各地にありますが、その中でも東京・千駄ヶ谷にある国立能楽堂は、月に3~4回ほど演じられているため、比較的観に行きやすい能楽堂です。

屋外にしつらえた舞台で、能楽が演じられることもあります。

野外での能楽を「薪能(たきぎのう)」と言います。

新宿御苑や平安神宮などの庭園の中で演じられることが多く、春や秋などの気候の良い季節に催されます。

能楽を観る前に知っておきたいマナー

能楽では、静かに観劇することがマナーの基本です。

歌舞伎のように掛け声や拍手などもしないため、最初から最後まで静かに舞台を観るようにしましょう。

後方の座席の方は、オペラグラスを持って行くのもおすすめです。

しかし、オペラグラスを出し入れするときに音が立つ可能性があるので、幕間にカバーを取っておくなど、周囲のお客さんたちに迷惑をかけないように配慮しましょう。

能・狂言(能楽)の知識を持って日本の伝統文化を楽しもう!

能や狂言は決して難しい芸術ではありません。

何度か観劇するうちに、美しい装束や豊かな世界観に魅了されることでしょう。

また、カルチャーセンターなどで能や狂言を習うこともできます。

興味を持ったときには、ぜひ演じる側としても能楽を楽しんでみましょう。