華道とは?歴史や流派・生け方について紹介
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日本の伝統文化を語る上で「華道」は避けては通れません。
しかし、「華道とは何か?」と問われれば、答えに詰まってしまう方も多いのではないでしょうか。
この記事では華道の歴史や基本、流派、関わり方について解説しています。
日本の伝統文化に興味がある方もそうでない方も、ぜひご覧ください。
目次
華道とは
華道とは、花器に四季折々の草花や木を入れ、美しさを見て楽しむ文化です。
「生け花(いけばな)」や単に「お花」と呼ぶこともあります。
和室の床の間に飾り、正面から見て楽しむことが一般的ですが、近年では公園や駅などのパブリックスペースに飾り、さまざまな角度から見て楽しむスタイルも増えてきました。
まるで野原の一部分を切り取ったかのような風情を表現することが、華道の目指す美でもあります。
しかし、美を作り出す手法は1つではありません。
シンプルに花器に花を投げ入れるスタイルもありますが、枝や葉を曲げたり木に花を挿し込んだりすることで、あえて手を加えて自然を表現することもあります。
華道の歴史
華道は、仏前に花を供えたことが始まりといわれています。
6世紀に日本に伝わった仏教において、仏像の前に花を供えること(供花:くげ)は重要な務めの1つでした。
聖徳太子に使えていた小野妹子(おののいもこ)は、出家して京都の六角堂に入り、毎日、供花をおこなったといわれています。
六角堂の池のそばに坊(僧侶が暮らす小さな家)があったことから、小野妹子が暮らした場所を「池坊(いけのぼう)」と呼んだようです。
その後、池坊は六角堂の僧侶の名としてもつかわれるようになります。
室町時代には、六角堂の僧侶・池坊専慶(いけのぼう せんけい)の生け花が評判となり、武士階級にも華道が広まっていきました。
江戸時代から庶民にもたしなまれるように
元禄時代には町人も華道に興味を持つようになり、民衆が親しむ文化として成熟していきます。
明治時代になると、華道は女子教育の1つとしても取り上げられるようになりました。
以後、急速に華道をたしなむ女性が増えていきます。
現在も趣味として華道を習う女性は多く、また、学校のクラブ活動として華道に触れる人も少なくありません。
華道の代表的な流派
華道においてもっとも有名な名前は「池坊」なのではないでしょうか。
しかし、池坊は華道の流派ではありません。
華道は池坊が始めたとされているため、池坊には「流」や「派」はつかないのです。
池坊は道祖を小野妹子としており、1,400年を超える歴史の中でさまざまな生け方や美を生み出してきました。
池坊以外の、華道を代表する流派を6つ紹介します。
華道の流派1.遠州(えんしゅう)
遠州(えんしゅう)は、小堀遠州(こぼりえんしゅう)が江戸時代に始めた華道です。
池坊から分かれたわけではないため、流や派をつけずに「遠州」と呼びます。
小堀遠州(本名は小堀正一。近江小室藩の藩主)は、徳川家の茶道指南役を務めたほどの、優れた茶人としても高名です。
華道だけでなく書画や和歌、造園、建築など多彩な才能を持ち、「綺麗さび」という美の概念を生み出しました。
遠州の華道の特徴は、葉や枝を曲げて曲線を作り、水の流れを表現する「曲生け」にあります。
ダイナミックかつ繊細で、小堀遠州ならではの美意識を表現しています。
華道の流派2.小原流(おはらりゅう)
小原雲心(おはらうんしん)によって明治時代に創流されたのが「小原流(おはらりゅう)」です。
西洋の花も盛り込んだ「盛花(もりばな)」と呼ばれる生け方が特徴で、明治時代に増えた洋館にも合うように工夫されています。
また、剣山を使ったのも小原流が最初といわれています。
剣山があることで、口の広い花器にも花を生けやすくなりました。
華道の流派3.日本古流(にほんこりゅう)
遠州や青山御流(せいざんごりゅう)など、さまざまな華道を学んだ角田一忠(つのだいっちゅう)は、明治33年、「甲新山古流」という華道の流派を創流しました。
その後、大正3年に流派の名前を「日本古流(にほんこりゅう)」と変え、現在に至っています。
日本古流の特徴は、シンプルで幾何学的なたたずまいです。
生け花は心の状態を映すものだとし、作為をなくし、素直に生けることを真髄としています。
華道の流派4.嵯峨御流(さがごりゅう)
「嵯峨御流(さがごりゅう)」は、嵯峨天皇の生けた菊の様子が天地人の美しさを備えており、「これから花を生けるときは、この姿を模範とするように」とおっしゃられたことから始まりました。
嵯峨御流のいけばなは、伝承花(でんしょうか)と心粧華(しんしょうか)の2つに分けることができます。
伝承花は、生花と盛花、瓶花、荘厳華の4つの種類があり、伝承花を発展させた心粧華には祈り花と才の花、想い花の3つの種類があります。
華道の流派5.未生流(みしょうりゅう)
「未生流(みしょうりゅう)」は、未生斎一甫(みしょうさい いっぽ)が江戸時代に創流しました。
花はありのままよりも、手を加えるほうが美しくなるという考えの下、黄金比に沿った形で生けています。
未生流では、美的感覚といったあいまいなものに頼らず、独自の比率で枝や葉の長さを切りそろえ、幾何学的に生け花全体のシルエットを仕上げていきます。
華道の流派6.草月流(そうげつりゅう)
「草月流(そうげつりゅう)」は、勅使河原蒼風(てしがわらそうふう)によって昭和2年に創流されました。
華道の中では新しい流派ですが、池坊や小原流と並んで学ぶ人が多く、三大流派のひとつとされています。
草月流の特徴は、その自由さにあります。
金属や石などの素材も使い、思うままに美を表現していきます。
華道の基本!生け花のかたちとは
華道では、まず軸となる花材「役枝(やくし)」を決めます。
たとえば、小原流では役枝を2つ取り、長いほうを「主枝(しゅし)」、短いほうを「客枝(きゃくし)」と呼び、主枝を奥に、客枝を手前に配置します。
バランスが取れたら、役枝の間の空間を関連する花や葉、枝等で埋めて完成です。
もちろん、さまざまな方法がありますので、かならずしも役枝を中心とした世界を作る必要はありません。
華道をはじめるには
華道を習える場所は日本全国に多数あります。
地域のカルチャーセンターの中にも、華道の流派は1つか2つ入っていることでしょう。
また、個人の家で、資格を持った先生が華道を教えていることもあります。
華道にはさまざまな流派があり、また、同じ流派の中でも先生によって教え方が異なります。
「これだ」と思える流派や先生に出会えるまでは、いくつかの教室や講座を回ってみることもできます。
しかし、どの先生も「生け花の心を伝えたい」という思いは同じですので、自分に合わないからといって、横柄な態度をとったり約束の時間に遅れたりすることはNGです。
途中で辞めるのだとしても、礼を尽くすようにしましょう。
華道は日本の伝統的な芸術文化のひとつ!魅力や奥深さを感じてみよう
華道は日本が誇る文化の1つです。
欧米にも花を美しく飾るフラワーアレンジメントの文化はありますが、日本の華道は少ない植物を豊かに見せる独自のアートです。
華道を教えている教室は日本全国にあり、遠くまで出かけなくても始めることができます。
ぜひ気軽に門を叩き、華道に触れてみましょう。