茶道とは?基本の精神や利休の教え、歴史や流派をわかりやすく紹介
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アニメやマンガなどのポップカルチャーだけが日本文化ではありません。
日本には、茶道や華道、書道、能などの長い歴史を誇る伝統的文化も多数存在します。
その中でも多くの人々に親しまれている「茶道」に焦点を当て、基本的な考え方や歴史、流派について分かりやすく紹介します。
目次
茶道とは
茶道とは、亭主が客にお茶をふるまう際の作法と、客としてお茶をいただく作法、それらを基本とした様式と芸道のことです。
流派によって、細かく作法が決まっています。
- 手の動きや流れ
- お茶の飲み方
- 声のかけ方
- お辞儀の仕方
- 座り方
- 歩き方
などの所作が決まっており、何度も繰り返すことで習得していきます。
なお、茶道は「さどう」という読み方が一般的ですが、「ちゃどう」と読むこともあります。
また、「茶の湯(ちゃのゆ)」と表現することもあります。
茶道はお茶を軸にした総合芸術
茶道には、「お茶を客にふるまう」「客としてお茶を飲む」以外にも大切な要素があります。
- 茶室を清潔に掃除すること
- 季節を感じる掛け軸や花などを飾ること
- 茶室に至るまでの庭や通路を美しく整えること
- お茶会にふさわしい茶碗や袱紗(帛紗、ふくさ)
- お菓子の準備
などの事柄も、総合的な意味で茶道に含まれます。
もちろん、客側には、亭主の心遣いを感じ、ふさわしい言葉で感嘆とお礼を伝えることが求められます。
茶堂は総合芸術とも呼ばれ、もてなす側の亭主だけでなく、もてなされる側の客も、茶碗や掛け軸、茶杓(ちゃしゃく)、棗(なつめ、抹茶の粉を入れる容器)などに対する審美眼を持つことが必要です。
茶道を通して、骨董品や茶菓子、着物や日本庭園など、他の日本の文化を知ることができるので「総合芸術」とも言われます。
茶道の精神「わび」「さび」
茶道は「わび」「さび」の精神がベースになった文化でもあります。
ところで、「わびさび」とまとめて表現することもありますが、実は「わび」と「さび」はまったく異なる意味を持つ言葉です。
「わび(侘び)」とは、「気落ちする」「辛く感じる」を意味する動詞「わぶ」から派生した言葉です。
『自然や時間、物事などが、人間の思い通りにはならないことへの物悲しさ、無常観に美意識を見出す表現』です。
華やいだ気持ちで過ごしたい、また、華やかなものに囲まれていたいといった欲求を抑え、敢えて不便な状態に身を置くことで「わび」の精神や美を理解しやすくなるでしょう。
一方、「さび(寂び)」とは、「生命力が衰えていく」「自然に衰退する」を意味する動詞「さぶ」から派生した言葉で、『飾り立てがなく慎ましやかな状態』を意味しています。
「わび」と「さび」をそろえ、質素で静かなものを基調として、儚さや不足を良しとする、悟りの概念に近い思想ともされています。
究極的には、「茶碗1つさえあれば、お茶をもてなすことができる」という茶道の美意識そのものを表現している言葉です。
茶聖・千利休の教え「四規七則(しきしちそく)」
お茶で客をもてなすこととお茶を飲むことを作法として確立したのは、大阪・堺の千利休と言われています。
千利休は1522年(諸説あります)、塩魚をあつかう商人の子として生まれました。
家業をおこないつつ、17歳ごろから茶の湯を習い、茶に傾倒していったことが分かっています。
なお、千利休の幼名は田中与四郎ですが、禁中茶会の際に町人の身分では参加できないため、正親町天皇(おおぎまちてんのう)から「利休」という号が与えられて、千利休と名乗るようになりました。
また、利休と名乗る前には「宗易(そうえき)」と名乗っていましたが、宗易の名は仏教に帰依して与えられた法名だったとされています。
利休は茶の湯の心として「四規七則」を伝えました。
四規とは、「和敬清寂(わけいせいじゃく)」の4要素を指します。
- 「和」=人と人とが仲良く過ごす
- 「敬」=お互いに敬う
- 「清」=澄み切った心を保つ
- 「寂」=穏やかな心を保つ
また、「七則」とは、次の7つを意味します。
- 心を込めてお茶を立てること
- 物事の本質をわきまえること
- 夏は涼しく過ごすこと
- 冬は暖かく過ごすこと
- 自然にあるような形で花を飾ること
- 時間にゆとりをもつこと
- 雨が降らなくても雨に備えるように万事整えておくこと
茶道の歴史
お茶は元々中国から伝わった文化で、日本ではまず僧侶が喫茶の習慣を身につけました。
中国ではお茶を薬として飲んでいたため、僧侶も楽しみというよりは健康のために飲んでいたようです。
そして、貴族階級や武家たちにもお茶を飲む習慣が広まり、お茶の香りや味、飲んだ後の清涼感などを楽しむ人々も増えていきました。
鎌倉時代には客をお茶でもてなす習慣も一般的になり、日本各地で茶畑が作られるようになりました。
室町時代になると、中国の茶碗などの「唐物」を用いた茶会が流行します。
また、日本で作られた茶道具「和物」を使った茶会も開催されるなど、茶の文化が多彩になります。
亭主と客との精神的な交流に重きを置く千利休などによる流派や、華やかな茶室や茶道具を楽しむ流派なども誕生します。
茶道の流派
千利休の茶の精神や作法は、子孫や弟子たちにも受け継がれていきました。
利休の孫の宗旦(そうたん)には4人の息子がおり、三男の宗左(そうさ)が家を引き継ぎました。
四男の宗室(そうしつ)が、宗左の庵の裏に自分の庵を建てたことから、宗左の流派を「表千家」、宗室の流派を「裏千家」と呼ぶようになりました。
また、後日、次男の宗守(そうしゅ)も庵を建て、現在では「武者小路千家」と呼ばれる流派の祖となっています。
表千家と裏千家、武者小路千家を「三千家」と呼び、茶道を代表する流派として知られています。
なお、各流派の中にもいくつかの流派があり、三千家以外にも流派や傍系があります。
茶道を始めたい人は、茶道教室や体験会を探してみよう
茶道は趣味として気軽に始めることができます。
カルチャーセンターや市民講座、学校の部活動などでも茶道に触れることはできます。
また、茶道教室を開いている個人も多いため、遠くまで行かなくても始めやすい習い事の1つといえるでしょう。
三千家の中でも、とりわけ門戸が広いとされているのが裏千家です。
わびやさびの精神をベースにおいた、余計なものを排除したストイックさが茶道の魅力ですが、人によっては「取りつきにくい」と感じるかもしれません。
しかし、裏千家は比較的装いやしつらえのルールが厳しくなく、入門しやすいように配慮されています。
実際にカルチャーセンターや市民講座などでは裏千家の講師が教えることが多く、日本全国で数百万もの人々が習っていると言われています。
茶の湯を通して日常の所作を身につけたいと考えている方には、表千家や武者小路千家がよいかもしれません。
華美の対極に身をおくことで、わびやさびの心を習得することができるでしょう。
茶道という日本の伝統文化に触れてみよう
日本の伝統文化の中でも、茶道はもっとも親しみやすいものの1つです。
茶道を通して茶碗や掛け軸、着物などを楽しむこともでき、教養を深めることもできるでしょう。
ぜひあなたも気軽に茶道を学んでみてはいかがでしょうか。