ウイグル問題とは?内容や歴史、中国の人権侵害をわかりやすく説明

世界最多の人口を抱える中国。

数多くの民族が混在する人種のるつぼでもあります。

しかし、異なる民族が同じ国で暮らすことによって、問題が生じるのも事実です。

この記事では、中国のウイグル問題についてわかりやすく解説していきます。

ウイグル問題とは

地球儀上の中華人民共和国

中国にはさまざまな民族が住んでいますが、もっとも多いのは漢民族で、全人口の9割以上を占めています。

漢民族以外の55の民族を少数民族と呼び、トルコ系のウイグル民族もそのうちの1つです。

ウイグル問題とは、ウイグル民族に対して中国政府が加えている弾圧のことを指します。

ウイグル民族は、伝統的にイスラム教を信じている人が多いのですが、中国では「中国共産党への再教育」を名目として、多くのウイグル民族を強制的に収容し、自由を奪っているのです。

現在、ウイグル民族が多く住んでいるのは、新疆(シンチャン、または、しんきょう)ウイグル自治区です。

新疆ウイグル自治区の強制収容所には、100万人ほどのウイグル人が収容されていると言われています。

自治区外に住んでいるウイグル民族の人々も、わざわざ新疆ウイグル自治区に呼び戻されて、地域内に500ほど存在するという収容所に入れられてしまうケースもあります。

また、夫が収容所にいるウイグル民族の家庭に、共産党員である漢民族の男性が入り込む「PUBF(Pair Up and Become Family)」といった政策がおこなわれていることも問題です。

PUBF(Pair Up and Become Family)は、「ペアを組んで家族になる」という意味の政策です。

具体的には、「男性の共産党員が、ウイグル族の家庭に滞在し、監視の一環という理由でウイグル族の家族と食事をしたり、夫不在の女性と同じベッドで寝たりする」と、ラジオ・フリー・アジア(RFA)が報じたこともあります。

その他にも、新疆ウイグル自治区を中国政府の核実験場としている、という報告もあります。

<参考:Civil Servant-Family Pair Up – Wikipedia

新疆ウイグル自治区とはどんな土地?

ウイグルの広大な土地

中国の西端に、新疆ウイグル自治区と呼ばれる地域があります。

日本の国土の約4.4倍の広さを持つ広大な土地には、約2,500万人もの人々が居住しています。

中国とウイグル自治区の位置図

新疆ウイグル自治区で、最大の人口を占めるのがウイグル民族です。

約45%がウイグル民族で、800万人を超えるとされています。

次いで多いのは漢民族で、700万人を超える漢族の人々が新疆ウイグル自治区に住んでいます。

現在の新疆ウイグル自治区に当たる土地は、古くは「西域」と呼ばれていました。

シルクロードを通じて、代々の中国中央政府とも密接なつながりがあり、文化的交流も盛んでした。

漢や唐の時代には、中国の支配下にありましたが、8世紀後半になりウイグル帝国が興ると、中国中央政府とは少し距離が生じるようになります。

13世紀にはモンゴル帝国の勢力に組み込まれたものの、モンゴル帝国の衰退とともに支配権も移ろいます。

19世紀後半には清朝の省制に組み込まれて「新疆省(しんきょうしょう)」、1955年には中華人民共和国の一部となり「新疆ウイグル自治区」と呼ばれるようになりました。

ウイグル問題にいたる歴史

イスラム教の礼拝堂「モスク」

1,000年以上にわたって、中国の中央政府とのかかわりがあるウイグル民族ですが、常に弾圧を受けていたわけではありません。

18世紀後半、清朝によって省制が敷かれるまでは、ウイグル民族の有力者による自治がおこなわれていました。

しかし、19世紀後半に新疆省と呼ばれるようになってからは、清朝の漢族による直接支配が実施されるようになりました。

1911年に清朝が倒れた後も、中華民国・中華人民共和国の漢民族による支配が続いています。

東トルキスタン独立運動

漢民族による一方的な支配に対して、ウイグル民族は黙って耐えていたわけではありません。

1911年に辛亥革命(しんがいかくめい)が起こって清国が瓦解すると、今まで清国政府の支配を受けていたチベット民族やモンゴル民族などが、独立を目指して立ち上がります。

ウイグル民族も、「東トルキスタン共和国」を掲げ、独立を目指して立ち上がりました。

なお、東トルキスタンとは「テュルク人(ウイグル人やカザフ人、キルギス人などをテュルク系民族と呼ぶ)の土地の東部」という意味で、新疆ウイグル自治区一帯を指します。

しかし、新疆ウイグル自治区では、少数民族出身の党幹部が粛清されたり、イスラム教のモスクが破壊されたりといった、中華人民共和国による迫害が続きます。

1991年にはウイグル系の作家・トルグン・アルマス氏の著作が発禁処分になり、アルマス氏自身も軟禁状態に置かれました。

今もなお、東トルキスタンの独立運動は続いています。

新疆ウイグル自治区内だけでなく、キルギスやカザフスタンなどの近隣諸国、中国本土内などにも活動範囲が広がっています。

2009年ウイグル騒乱

2009年6月、広東省の玩具工場で、100人以上の中国人がウイグル系の労働者を襲撃し、2人が亡くなるという事件が起こりました。

しかし、襲撃した側の従業員に対する処罰が曖昧だったことから、ウイグル民族の人々の不満は高まり、同年7月5日、ウルムチ市内で抗議デモがおこなわれます。

デモには3,000人以上が参加し、中国政府の治安部隊によって発砲されるなどの暴動「ウイグル騒乱」に発展しました。

中国当局の報告では、「ウルムチ市内の、200人の死者のほとんどが漢民族であった」とされていますが、実際のところはわかりません。

なお、ウイグル側では、3,000人ほどのウイグル人が亡くなり、騒乱後、10,000人を超えるウイグル人が行方不明になっていると報告しています。

ウイグル問題に対する国際社会の動き

国連と各国の国旗

中国政府のウイグル民族に対する人権侵害は、国外にも報道されるようになりました。

2019年10月29日には、国連総会第3委員会で、日本やアメリカ、イギリスなどの23ヶ国が、中国に対して「ウイグル民族の恣意的な拘束をやめるように」と共同声明を出しています。

また、国連機関によって現地調査をおこなうことも求めました。

しかし、すべての国がウイグル民族側に立っているわけではありません。

ロシアやエジプト、パキスタンなどの54ヶ国は、中国政府を支持する声明を出しています。

中国政府を支持する国々は、「新疆ウイグル自治区に設置されている収容所内においても、ウイグル民族の人々の基本的人権は守られている」と主張しています。

中国の反応

中国政府は、日本やアメリカなどによる共同声明に対して、「内政干渉に当たる」と反発しています。

実際に、ロシアやミャンマー、ボリビアなど中国政府を支持する国々も多いことから、「ウイグル民族の人々の過激な行動を抑えることは、13億人もの人口を抱える中国政府を維持するために必要なこと」と、半ば開き直るような発言も飛び出しています。

ウイグル問題とは中国政府による民族弾圧と人権侵害

中国政府がウイグル民族に対しておこなっていることは、人権侵害以外の何物でもありません。

共産党に教化することを目的とした収容所への収容はもちろんのこと、特定の人種を差別し虐待することは決して許されません。

今後もニュースに注目していきましょう。