米中貿易戦争をわかりやすく知りたい!発端や経緯、世界の影響を解説
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米中貿易戦争は何がきっかけで始まったのでしょうか。
また、アメリカと中国が貿易摩擦を起こしていることで、両国やそのほかの国々にどのような影響があるのでしょうか。
世界の2大国家ともいえるアメリカと中国の確執についてわかりやすくまとめました。
目次
米中貿易戦争はなぜ始まった?
ドナルド・トランプ大統領はアメリカの貿易赤字を問題視し、大統領選挙の運動中から折に触れて「強い態度で諸外国と接し、貿易赤字を解消しなくてはならない」と主張してきました。
とりわけ輸入量が多い中国について厳しい発言を繰り返し、貿易が不平等な条件でおこなわれているとの見解を示してきました。
実際に、トランプ氏が大統領に就任して約1年が経過した2018年3月には、鉄鋼製品に対して25%の関税をかけるという大統領令にサインをしました。
中国はアメリカに大量の鉄鋼製品を輸出していたため、中国が輸出しにくい環境づくりに着手することで、貿易不均衡を解消しようとしたのです。
米中貿易戦争の発端は、2018年3月の大統領令へのサインにあると言われています。
米中貿易戦争の経緯
鉄鋼製品に対する関税は中国だけでなく全世界に向けたものでした。
しかし、アメリカが輸入する鉄鋼製品の大半は中国製だったため、中国をターゲットにした貿易制裁であることは明らかでした。
その後、アメリカは露骨に中国をターゲットとした貿易制裁をおこなうようになります。
2018年7月には、中国から輸入される半導体や産業用ロボットなど、約800品目に25%の関税をかけ、翌8月には同じく中国から輸入される電子製品やプラスチック製品など、約300品目に25%の関税をかけました。
さらに翌9月には中国から輸入される革製品やパソコンの部品、水産物などの約5,700品目、2,000億ドルに対して、今まで10%であった関税を25%に引き上げました。
もちろん、中国も無反応でいたわけではありません。
2018年7月のアメリカの貿易制裁に対しては、アメリカから輸入している大豆など、約500品目に対して25%の関税をかけることで対抗しました。
8月、9月も同様にアメリカからの輸入品目に対して、新たに関税を設定したり引き上げたりすることで報復措置をおこなっています。
アメリカでの影響
アメリカでは、安い中国製の鉄鋼製品が大量に流入することで、製造を停止していた鉄鋼業者も少なくありませんでした。
鉄鋼製品の輸入に25%の関税をかけたことで、トランプ大統領の目論見どおりに、一部の製造業者は鉄鋼製品の製造を再開しています。
しかし、アメリカの経済全体を見ると、中国への関税増加が決してよい影響を与えているとは言えません。
中国の鉄鋼製品やそのほかの製品を安く輸入することで経営が成り立っていた企業も多く、コスト増による利益の減少、売上減による失業者の増加など、好ましくない結果が次々と生じています。
実際に、2019年6月に発表された雇用統計では、非農業部門雇用者数は7.5万人増と、予想の17.5万人増を大きく下回る結果となりました。
また、平均時給の伸びも予想を下回る結果となり、中国からの輸入品に関税をかけたことが、かならずしもアメリカ経済にプラスとなっていないことが明らかになっています。
中国での影響
米中貿易戦争はアメリカだけではなく中国経済にも影響を与えています。
中国側からアメリカへの輸出が大幅に減ったことで、今後、中国のGDP(国内総生産)も落ち込むのではと見られています。
また、2019年6月、トランプ大統領は、アメリカ企業ではあるものの製造の大半を中国でおこなっている、アップル社のiPhoneやナイキ社のスニーカーなどに対しても関税を引き上げるつもりだと発言しています。
アップル社やナイキ社は「製品の単価が上がることで競争力が低下し、アメリカ経済に大きな影響が及ぶ」と反発してはいますが、実現されるならば、アメリカ企業だけでなく中国経済にも大打撃を与えることになるでしょう。
世界にはどのような影響が出ているか?
アメリカと中国の貿易戦争は、両国以外の経済にも影響を与えています。
とりわけ、中国との貿易量が多い日本やオーストラリアでは、中国への輸出量は据え置きで輸入量が大幅に増加するなど、輸出と輸入がつり合わない貿易不均衡の拡大が危惧されています。
また、中国から経済的支援を受けてインフラ整備を進めている東南アジアやアフリカの国々では、今後、支援が減少する可能性が充分にあります。
そのほかにも、世界的に流通量の多いアメリカドルと中国元が不安定になることで、中国やアメリカとは直接的なかかわりが少ない国々においても為替と株価が不安定化する恐れがあるでしょう。
米中貿易戦争は今後どうなるのか?
2018年7~9月の3ヶ月間に、アメリカは中国製品の約半分に関税を上乗せし、中国はアメリカ製品の約70%に関税上乗せを決定しました。
トランプ大統領と中国共産党を率いる習近平主席がお互い一歩も引かずにエスカレートした感がありますが、関税を高くするということは決して相手だけにダメージを与える方法ではありません。
アメリカにおけるアップルやナイキのように輸入品を使って利益を上げている企業にとっては、自国の政府から経済的圧力を受けていることにもなってしまうからです。
今後は、関税を高くするといった「わかりやすい経済制裁」をお互いが実行するのではなく、貿易におけるルールなどを話し合って決めていく必要があります。
また、経済力で世界をリードするアメリカと中国の貿易戦争は、決して両国だけの問題ではありませんから、日本を含むほかの国々も傍観しているだけではいけないと言えるでしょう。
米中貿易戦争への日本の対応
アメリカに輸出される中国製品のなかには、日本製の部品を使っているものが数多くあります。
そのため、中国からアメリカに輸出される製品が減ることで、日本の製造業界にもダメージが生じています。
日本の企業のなかには、工場を中国以外の国々、たとえばベトナムやインドネシアなどに移転する必要にせまられている企業もあります。
移転に費用がかかるだけでなく、移転先によっては電気や水道などのインフラから整えなくてはいけないこともあるため、経済的に大打撃となることは容易に予想されます。
日本経済が衰退しないためにも、米中貿易戦争の流れを速やかに感じ取り、迅速に対応する必要があると言えるでしょう。
米中貿易戦争について知り、今後の動向に注目しよう
米中貿易戦争は決して対岸の火事ではありません。
アメリカと中国は日本にとっても1、2位となる貿易相手国であり、経済に大きな影響を及ぼしている国々です。
ニュースをこまめにチェックして米中貿易戦争の流れを知り、今後の動向に注目していきましょう。