ゆとり世代とは?特徴と年代や社会との関連について解説
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ニュースや新聞などのメディアで耳にするしたり、会話の中でも「ゆとり世代」という言葉を使うことがありますが、どのような世代の人たちを指すかご存知でしょうか。
ゆとり世代とされる年代や特徴についてまとめました。
目次
ゆとり世代とは
ゆとり世代とは、文部科学省(2001年1月5日までは文部省)が定めた学習指導要領に準じた、いわゆる「ゆとりある教育」を受けた世代とされています。
しかし、実際のところ「ゆとり世代」はいつからいつまで、ということは明確に決まっていません。
そればかりか、学習指導要領を定めた文部科学省が「ゆとり世代」と発したことはないのです。
では、「ゆとり世代」はどこからきたのでしょうか。
「ゆとり世代」はマスコミが作った
実は「ゆとり世代」はマスコミが称したことから定着した言葉になります。
学習指導要領は、全国のどの地域でも教育を受けても一定の水準を受けられるようにする目的でつくられた教育課程のことで、昭和22年(1947年)に策定以降、時代に応じて文部科学省は何度か改定を行っています。
ゆとり世代とされる年代にも学習指導要領の改訂が行われ、詰め込み教育から脱するため、ゆとりある教育を目指し、学習量と授業時間の大胆な削減を行いました。
マスコミは、この改訂された学習指導要領のことを「ゆとり教育」と称し、この改定された学習指導要領に準じた教育を受けた世代のことを「ゆとり世代」と呼ぶようになったのです。
3段階に分けられるゆとり世代
ゆとり世代は、マスコミが作った言葉なので明確に時期は決まっていません。
定義はありませんが、学習指導要領の改訂を基にすると、3段階に区分けできます。
この3区分に該当する世代の年齢は、2020年時点で55~15歳までと幅広いです。
1980年度改訂「ゆとりと充実」
ゆとり教育の第一期は、1980年の学習指導要領に沿って教育を受けた世代です。
当時、義務教育を受けていた1965年4月2日~1974年4月1日に生まれた方(2020年4月2日時点で、55歳~46歳)は、ゆとり教育の第一期ともいえます。
学習以外にも、心のゆとりを目指した時間が取られるようになりました。
1992年度改訂「新学力観」
ゆとり教育の第二期は、1992年の学習指導要領に沿った教育を小中学生のときに受けた世代です。
おおよそ1977年4月2日~1986年4月1日に生まれた方(2020年4月2日時点で、43歳~34歳)を指します。
最初は第二土曜日が、1995年からは第二に加えて第四土曜日も休みになって、学校に行く日数が減りました。
2002年度「生きる力」
ゆとり教育の第三期は、2002年から2010年にわたる学習指導要領の影響を受けた世代です。
諸説ありますが、おおよそ1987年4月2日~2005年4月1日生まれの方(2020年4月2日時点で、33歳~15歳)を指します。
毎週土曜日は完全に休みになり、多くの企業と同様、週5日制が導入されました。
メディアでは1987年以降に生まれた人々をゆとり世代と呼ぶ
3期すべてをゆとり世代とすると、非常に多くの方がゆとり世代に分類されます。
けれど、実際には「2002年から始まる、第三期の学習指導要領に沿った教育を受けた方」のみ、ゆとり世代と呼ぶことが多いです。
そのため、テレビや雑誌などでとくに注釈なく「ゆとり世代」と言うときは、1987年4月2日~2005年4月1日生まれの人々を指すことが少なくありません。
また、ゆとり世代の中でもとりわけ1995年以降に生まれた方は、小学校1年生のときからゆとり教育を受けているため、ゆとり教育が根付いた世代ともいえます。
その背景もあり、1995年4月2日生まれ以降の人だけを「ゆとり世代」と呼ぶこともあります。
ゆとり世代はさとり世代とも言われる
ゆとり世代後半の世代は、他に「さとり世代」とも呼ばれます。
こちらも明確な定義がありませんが、1987年から2004年ごろに生まれた人のが該当するとされ、2013年の新語・流行語大賞にノミネートされました。
さとり世代の特徴としては、以下があります。
- ブランド品に興味が薄い
- コスパの良い物や実用性を重視する
- 恋愛に興味がない
- デジタルネイティブ
- SNSでコミュニケーションをとることを好む
- 深い人間関係を好まない
さとり世代の特徴は、生誕後にバブルが崩壊し不況下の日本しか知らないこと。
幼いころから、スマートフォンやパソコンなどの電子機器が存在し、インターネット環境と触れあっていたことから情報量が豊富であること。
以上から、合理性を重視する傾向から生まれたと考えられています。
ゆとり教育が始まった背景
ゆとり教育は、日本の詰め込み教育への反省から始まりました。
高校を卒業するまでに多大な知識の習得を強いる従来の教育方法は、大学入試突破を目標に、暗記メインでとにかく知識を増やすための指導で、学習についていけない子どもたちを大勢生みました。
また、カリキュラムの余裕のなさが子どもたちの心から余裕を奪い、いじめや学級崩壊などの問題を生んでいるのではとの指摘も少なくありませんでした。
そこで、各校で余裕をもってカリキュラムを組めるように、文部省(2001年1月6日以降は文部科学省)では学習要綱で定める学習量の見直しに着手したのです。
学校で心のゆとりを目指した時間をとるだけでなく、土曜日を休みにして子どもたちが課外活動に取り組むための時間を設けました。
さらに、2002年からは総合的な学習の時間を設け、自発的に考える力を養う取り組みも開始したのです。
現在の指導要領は
平成29・30年の改訂学習指導要領は、子どもたちの生きる力を育むことを目標としています。
生きる力とは、学習だけでなく学習の先にあるものを見据え、社会がどのように変化しても、自分で課題を見つけて自分で解決できる力のことです。
<平成29・30年改訂学習指導要領で新設された学習内容>
小学校 |
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中学校 |
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高校 |
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<参考:文部科学省「平成29・30年改訂学習指導要綱のくわしい内容」>
文部科学省では学校教育を通して、子どもたちが予測困難な社会において柔軟に生きていけるように指導していきたいと考えています。
具体的には、主体的な学び(アクティブラーニング)を通して、一人ひとりが理解することの面白さを気付けるような授業をおこないます。
単に教師が板書をするのではなく、子どもたち一人ひとりが授業に参加し、参加した中から「気付き」や「学び」を得られることを目指します。
ゆとり世代の特徴
脱・詰め込み教育と思考力を養うことを目標として、実施されてきたゆとり教育を受けた世代には、その世代ならではの特徴があります。
- 仕事よりもプライベートを重視
- 指示がないと自分から行動しない
- すぐ結果を求めインターネットで検索する
- 物欲がなく物への執着が薄い
- 恋愛や結婚への興味が薄い
ひとまとめに「ゆとり世代」とくくり、全ての人が共通するわけではありませんが、一定の傾向があるのは事実です。
ゆとり世代ならではの価値観の背景と、ゆとり世代以外の人々はゆとり世代をどう見ているのかについて見ていきましょう。
ゆとり世代の価値観の背景
ゆとり世代は、自分で考えるように教育されてきた世代です。
しかし、ゆとり教育に本人や親が懐疑的な家庭や中学受験を目指している場合には、放課後や週末を学習塾で勉強して過ごすケースも少なくありません。
そのため、ゆとり世代はそれ以前の世代よりも、教育に対する熱量や実際の学習量の差が大きくなっている世代ともいえるでしょう。
とはいえ、人間をつくるものは学校教育や学習だけではありません。
学習を重要だという考えもあれば学習以外を重要視する考えもあり、また、どう学ぶかにこだわる人もいれば学習量にこだわる人もいるのも自然なことです。
ゆとり世代の存在で、より一層、多様な生き方・考え方が許容される世の中に変わりつつあると見ることができるでしょう。
ゆとり世代と非ゆとり世代の考え方
ゆとり教育が実施されるまで、学校教育は「教師が教えたことを生徒が無条件に覚える」形で行われることが一般的でした。
そのため、社会に出てからも上司の命令や指示に疑問を抱かず、上司や会社側が設定した目標に向かって邁進していくことが当たり前と考える風潮があったのです。
しかし、ゆとり世代は「自分で考えること・疑問を持つこと」を学校教育で習ってきた世代です。
会社にとって正しいことであっても疑問に思ったことは意見を述べます。
また現状が自分に合わないと感じたら、少子化により売り手市場の就活を経験してきた世代で転職に抵抗があまりないため、今の仕事が自分に合わないと感じたら、すぐ新しい就職先を探します。
考え方の違いからネガティブに捉えられがちなゆとり世代
ゆとり世代と非ゆとり世代の考え方の違いから、ゆとり世代を指導する立場の人が非ゆとり世代である場合には、「今までの自分たちの”ふつう”と違う」「扱いにくい」「個性が強すぎる」という認識をもちます。
そして自分たちとの違いを認めず、「新卒がすぐ辞めたのは我慢ができないからだ」「社会人なのに先輩が誘った飲みに付き合わず協調性がない」「会社の社員である意識が薄い」とゆとり世代をネガティブに捉えることがあります。
また、ゆとり教育での学習指導要領で学習量が少なくなったことから、ゆとり世代は「学力が低い」「仕事ができない」と思い込んでいる非ゆとり世代もいます。
ゆとり世代との付き合い方
ゆとり世代とひとくくりにすることはできませんが、ゆとり世代は物事の考え方が柔軟であることは事実です。
ゆとり世代というくくりがなくても、若年層の未熟な部分は目につきやすく、槍玉にあげられやすいものです。
世の中の矛盾についても「慣習だから」と思考を停止するのではなく、「なぜだろう」と問題提起できる力を備えている人が多くいます。
つまり、ゆとり世代と付き合う世代にも、自分で考える力が求められているのです。
自分との違う考えを排除するのではなく、許容しあえる社会を目指しましょう。