赤字国債とは?建設国債との違いや借金が増えるデメリットを紹介
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現代の日本政府は、税収よりも多い金額を使って国家を運用しています。
財政赤字という状態であり、足りない分は『国債』という「お金を借りるための券」を発行して、資金調達しています。
国債には『赤字国債』と『建設国債』があります。
今回は2つの国債の違いや、国債が増えることでのデメリットについて紹介します。
目次
赤字国債とは
赤字国債とは、財政赤字時に資金調達を行うために発行する国債(国庫債券)です。
現代日本は、赤字国債の発行無しでは成り立たない状態が続いています。
例えば、政府が閣議決定した2019年度予算案では、
- 一般会計総額:101兆4564億円
- 税収:62兆4950億円
- 税外収入(預金保険機構の利益剰余金など):6兆3016億円
- 新規国債:32兆6598億円
となっています。
次のグラフは、財務省が発表している「公債残高の累積」を表したものです。
<画像引用元:財務省 財政に関する資料|公債残高の累積>
財務省の公表データによると、国債発行残高は年々増えていて、2019年度末には897兆円となる見通しと言われています。
政府(国)とは別に、地方自治体も地方債による借金が進み、発行残高は約200兆円とされています。
国と地方の債務残高は、総額で1,000兆円を超えているのが実情です。
現在の債務残高を、日本の人口でおおまかに計算すると、国民1人あたり約1,000万円の借金を持っていることになります。
赤字国債と建設国債は何が違う?
国債は発行目的や償還期間によって分けられ、現在は「建設国債」と「赤字国債」の2つが発行されています。
国債の種類 | 発行目的 |
---|---|
建設国債 | 公共事業を行う際に、国の予算では足りない金額を国債として発行 |
赤字国債(特例国債) | 建設国債を発行しても予算が足りず、公共事業以外の歳出に充てる金額を確保するために発行 |
建設国債は、投資的経費として公共事業などに発行される国債です。
赤字国債は、日本の税収で足りない支出を補うために発行される国債です。
例えば、社会保障費や防衛費に充てられます。
実は、赤字国債の発行は財政法により禁止されていますが、国は特例法にて赤字国債を成立させています。
建設国債と赤字国債以外に、『復興債』という国債もあります。
復興債は、建設国債と赤字国債とは明確に区別され、「東日本大震災からの復興のための施策を実施するために必要な財源の確保に関する特別措置法」の財源確保するために発行されました。
復興債は「平成49年度(2037年)までの間に償還する」としています。
特例法に基づく「赤字国債」は本来1年限りの発行だった
赤字国債は、1965年の不況時に、税収の落ち込みを補填するため、1年限りの「特例」として発行されたものでした。
1975年に石油ショックが起きて、赤字国債は再度発行されました。
再発行以降は、バブル景気の影響で税収が多かった1990年~1993年度を除き、赤字国債はほぼ毎年発行されています。
国債を大量に発行するデメリットは?
国債を大量発行することでのデメリットとして、「利回りが悪くなる」という点があります。
国債に限らず、商品や物がたくさんあると「値段や価格」が下がります。
国債も同様で、少ない発行数だと国が定めた金額で購入するしかありませんが、大量に発行されると「国債を欲しい人の数」より「国債自体の発行数」が上回り、売れ残りが生じます。
国債が売れ残ると、値引きをしてでも国債を売るしかないため、国債の利回りがあらかじめ定められた利率より上昇します。
国債の利回りが悪くなることでの影響を、細かく解説します。
銀行の金利が上昇する
銀行の金利は、国債の利回りを基準に設定されています。
国債を大量に発行すると国債の利回りが上昇し、銀行の貸し出し金利が上昇します。
銀行の貸し出し金利が上昇すると、銀行からお金を借りたい会社や人が借りにくくなります。
会社の場合は、設備投資や資金繰り、個人の場合は車や家を買う時の金利に影響します。
金利が高いときにローンを組むと、低いときに比べて多くの金額を支払わなければならないため、銀行からの借入を控える人が増えます。
景気が冷え込む
金利が高くなって、企業が銀行からお金を借りにくい状況だと、思い切った経営判断ができなくなり投資等に費用が使えなくなります。
企業の売上が減れば従業員たちの給料は減り、家計を圧迫して、物が売れにくい状況となります。
物が売れない状況が続くと企業の収益が減るので、リストラで従業員を減らして人件費を削減したり、従業員の給料を減額する可能性があります。
景気の冷え込みは、お金が動きにくい悪循環の社会となり、不景気が続いてしまう恐れがあります。
投資家から「債務不履行(さいむふりこう)」の不安を抱かれる
国債の発行そのものは、悪いことではありません。
しかし、国債の大量発行によって借金の総額が肥大していくと、国債を購入している投資家は、
- 「日本の国債は、満期に返ってくるのだろうか?」
- 「日本は、借金を返済する力があるのだろうか?」
といった不安を抱くかもしれません。
不安が拡大すると、日本に対する信用が失われて国債の買い手がつかなくなり、価格が暴落する可能性があります。
また、日本への信用度が低下すると「日本に投資しよう」と考える投資家も減るため、為替相場や株価にも悪影響となります。
「国家が破綻することは、めったにあることではない」という意見もありますが、現実に債務不履行となった国家は存在します。
債務不履行とは、約束した義務を果たさないことで、この場合は「借りていたお金を返せなくなること」を指します。
例えば、1998年にロシアで、2001年にはアルゼンチンで、国の財政が行き詰まって事実上の債務不履行となりました。
また、2010年のギリシャでは、財政赤字を発端にギリシャ国債が暴落しました。
世界的に見ても日本の財政赤字は巨額
世界的に見ても、日本の債務残高は巨額です。
下のグラフは、先進7か国での『純債務残高の国際比較(対GDP比)』を表したものです。
<出典:IMF “World Economic Outlook Database”(2018年4月)|純債務残高の国際比較(対GDP比)>
表中での先進7か国とは、
- 日本
- アメリカ
- イギリス
- ドイツ
- フランス
- イタリア
- カナダ
を指します。
表からは、日本の債務残高の水準は、先進7か国の中では最悪の部類となっているのがわかります。
なぜ日本の赤字国債は、増えていってしまったのでしょうか。
赤字国債が増えた理由
赤字国債が増えた理由には、日本の景気が悪く税金の収入が減り、国の収入(歳入)が減ってしまったのに国の支出(歳出)が増えたことが挙げられます。
また、日本は高齢社会が年々進み、働く年代が減っています。
しかし、年金や医療費等をもらう年代は増えているので、社会保障費が増加していることが関係しています。
日本は大きな借金をしているけど大丈夫?
債務残高1,000兆円という途方もない金額に不安を覚えますが、日本は海外や国内に株式や日本郵政などの資産を持っているため、「1,000兆円の借金なら問題ない」という意見もあります。
国の借金は国民から借りているものなので、借金問題は国内で片が付くから大丈夫、という考え方もされます。
日本は輸入大国であり、さまざまな物資を諸外国からの輸入に頼って生活しています。
食料自給率は4割と、私たちの食べものの半分以上は外国から輸入しています。
経済が破綻し、日本円に対する信頼がなくなると、外国から物が買えなくなるため、大混乱に陥ることは想像できます。
国の借金を減らす方法
国の借金を減らす方法は2つあります。
- あえて支出を増やして、国民の収入を増やし、税収を増やし支出の増加分以上の収入を増やす
- 支出を減らし、増税により税金を増やして収入を増やす
どちらにしても増税が必須になるため、国民の理解を得ることと、増税しても不景気にならない経済社会づくりが政治に求められます。
また、ひとつの過激論として、ハイパーインフレーションを起こす、というものがあります。
日本国内でハイパーインフレーションが起これば、借金の実質的な負担額が大幅に低下して借金を返す必要がなくなる、という考えです。
しかし、ハイパーインフレーションが起こると国民の生活に支障が出るので、現実的ではありません。
例えば、アフリカのジンバブエでは、ハイパーインフレーションにより物価が1年間の間に3,550倍上昇しました。
日本円に換算すると、100円で買えたパンが35万5千円に変化することになります。
赤字国債に対する今後の施策を注目しよう
赤字国債の発行額は年々増えていますが、当面は問題がないとされています。
しかし、負債を次世代につなげてしまうのは良くないという意見もあり、赤字国債を減らすための努力が必要です。
今後、日本がどのような財政対策を行っていくか注目していきましょう。