偏向報道とは?意味や問題、対策を知ってニュースを鵜呑みにしない
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あなたがいつも耳にするニュースは、本当に事実だけを伝えていますか?
もしかしたら特定の意見に偏った「偏向報道」を毎日見聞きしているのかもしれません。
偏向報道とは何か、日本の報道は信用できるのかについてまとめました。
目次
偏向報道とは
偏向報道とは、事実を事実のまま報道するのではなく、特定の意見に誘導するように報道することを意味しています。
たとえば、Aという法案が国会で可決されたとしましょう。
単に法案の内容と施行日を報道するだけなら、偏向報道ではありません。
しかし、法案の内容を紹介してから、街の人々の声として反対意見ばかりを紹介したり、法案成立によって起こり得る問題点についてばかり解説したりするとどうでしょうか?
報道を見ている人々は、「この法案が決まったことで暮らしにくくなるのでは」と不安になってしまうでしょう。
また、報道しないことも偏向報道になり得ます。
報道局にとって不都合な事実をあえて報道しないことで、世の中に問題がないかのような印象を人々に与えます。
たとえば、ある県で政府に反対する大規模なデモが起こっていたとしましょう。
あえてデモについて報道しないことで、政府に対する批判を抱かせないように民意を誘導させることもあるのです。
日本の報道は「放送法」によって公平中立であることが定められている
日本では「放送法」という法律があり、第4条では「報道は政治的に公平中立でいけない」と定められています。
また、事実を捻じ曲げて報道しないこと、複数の意見がある場合はできるだけ多くの論点から報道することも定められています。
第四条 放送事業者は、国内放送及び内外放送(以下「国内放送等」という。)の放送番組の編集に当たつては、次の各号の定めるところによらなければならない。
一 公安及び善良な風俗を害しないこと。
二 政治的に公平であること。
三 報道は事実をまげないですること。
四 意見が対立している問題については、できるだけ多くの角度から論点を明らかにすること。
<出典:総務省 電波利用ホームページ「放送法」>
先程の例のように「特定の意見だけを報道すること」や「あえて特定の意見を報道しないこと」は、いずれも報道法の規定に反することになります。
世界報道自由度ランキングで日本は【66位】(2020年版)
言論と報道の自由を目指す非政府組織「国境なき記者団(Reporters Without Borders)」では、毎年、報道の自由度のランキングを公開しています。
2020年度の日本の報道自由度は180ヶ国中66位と、決して高いとは言えません。
国内にいると報道の不自由さは実感しないかもしれませんが、世界から見ると日本は自由な国ではないようです。
<報道の自由度ランキング>
上位5ヶ国 | 下位5ヶ国 |
---|---|
1位:ノルウェー | 180位:北朝鮮 |
2位:フィンランド | 179位:トルクメニスタン |
3位:デンマーク | 178位:エリトリア |
4位:スウェーデン | 177位:中国 |
5位:オランダ | 176位:ジブチ共和国 |
<出典:Reporters Without Borders「2020 World Press Freedom Index」>
日本の「報道の自由度」が低い理由
大手メディアなどの記者たちで構成している「記者クラブ」は、加盟会社以外の記者を会見に参加させないなど、排他的な団体として知られています。
また、特定の政党や団体から、記者室を無償で提供されるなどの便宜を図られることも多く、偏向報道に加担するケースも珍しくありません。
広告収入を得ているスポンサーに忖度し、メディアが自発的に偏向報道をおこなうこともあります。
スポンサーが好むような情報を積極的に報道し、反対にスポンサーが好まないニュースやスポンサーの営業活動を阻害しかねない情報は、意図的に報道しません。
「反政府ありき」で偏向報道をおこなうメディアも、日本の報道の自由度を低めていると言えるでしょう。
中には「政府がおこなうことに反対することが真の自由だ」と錯覚し、「とにかく政府や与党がすることなら、すべてバッシングする」ことを第一義にしているケースも見られます。
偏向報道の問題点
視聴者や読者は、自分が見聞きしている報道が「偏向報道なのか否か」を判断できないかもしれません。
そのため、歪められた報道を真実だと思い込み、マスコミの思い通りの考え方をするようになることがあります。
たとえば、特定の国のネガティブな面ばかりを見聞きしていると、いつの間にか、その国が良くないかのように感じてしまう人もいるでしょう。
特定の国民を差別したり、直接的な被害を受けたわけではないのに悪口を言いふらしたりする可能性もあります。
偏向報道からヘイトスピーチにつながっていくケースも見られます。
偏向報道の事例
偏向報道の事例には事欠きません。
たとえば2001年、当時の長野県知事・田中康夫氏が「脱・記者クラブ宣言」を唱えたところ、信濃毎日新聞社が反発を示し、以後、田中元知事の政策を批判する報道のみをおこないました。
また、2011年、俳優の高岡蒼甫氏(たかおか そうすけ/過去、蒼佑や奏輔に改名あり)が、「8チャンネルは韓国のテレビ局かと思うほど韓国寄りの情報が多い」とツイッターで述べたところ、所属事務所から解約を申し渡されるというトラブルが起こりました。
契約解消後、元所属事務所への忖度からか、ワイドショーなどでは高岡氏に対する批判ばかりを報道するという状況が続きました。
偏向報道への対策
本来ならば、ニュースはニュースとして報道者の意見を入れずに報道すべきです。
しかし、ニュースの意味を噛み砕いて説明する際に、意図しなくても報道者の意見が入り込み、視聴者や読者を特定の考え方に誘導してしまうことがあります。
つまり、どんなに慎重に報道しても、私見がまったく入らないように制御することは困難と言わざるを得ません。
しかし、特定のメディアだけからニュースを仕入れるのではなく、さまざまな放送局や新聞社、雑誌社などを利用するようにすることで、ある程度は偏向報道に惑わされないようにすることができます。
また、普段から、報道をそのまま受け取るのではなく、次のことを心がけることも大切です。
- 情報を疑ってみること
- 自分自身の意見を持つこと
- 自分とは異なる意見を聞くこと
偏向報道がSNSによって不用意に拡散される時代
ニュースの発信源は、新聞社か放送局、雑誌社などのメディア企業に限られていました。
しかし、現在ではSNSを使って個人でもニュースを発信できます。
私見をさもバイアスがかかっていない情報であるかのように報道し、人々の考え方を特定の方向に誘導しようとする人も少なくありません。
SNSを見ること自体は悪いことではありません。
注意すべきは、どんな情報であれ「本当のことだろうか」「主観が入ってはいないだろうか」と考えながら見聞きする習慣を身に着けることです。
また、自分自身が情報を発信するときも注意が必要です。
ニュースを引用するときは引用元を明らかにし、どこまでが事実でどこからが自分の意見なのかが簡単に分かるようにしておきましょう。
世の中には恣意的に世論操作をする人もいますので、誤解を受けないように表現しているか細かく確認してから発信してください。
偏向報道の可能性を意識できるリテラシーが個人に求められる
偏向報道は決して珍しいことではありません。
スマホで見るニュースのほとんどは、何かしらの意図を含んでいると言っても言い過ぎではないでしょう。
すべての情報を真に受けるのではなく、真偽を自分で調べる習慣を身に着ける必要があります。