アベノミクスとは?基本をシンプルに解説

安倍内閣の経済政策と言えば「アベノミクス」ですが、具体的にはどのような政策かご存知でしょうか。

いまさら聞けないアベノミクスの内容と、アベノミクスの目的は実際に達成されたのかについて解説します。

アベノミクスとは?

アベノミクスとはどういう意味
<引用元:首相官邸公式サイト「アベノミクス3本の矢」

アベノミクスとは、安倍内閣の「アベ」と経済を意味する英語の「エコノミクス」を合成した造語です。

安倍内閣の経済政策という意味で使います。

安倍晋三首相は、2019年9月時点では、第90代と第96代、第97代、第98代の内閣総理大臣を務めています。

第90代内閣総理大臣に就任しているときも、数度「アベノミクス」という言葉が使われた例はありますが、頻繁にアベノミクスという言葉が使われるようになったのは第96代内閣総理大臣に就任してからです。

つまり、2012年12月26日以降の3代の内閣における経済政策を「アベノミクス」と呼んでいるのです。

なお、国家元首の名前とエコノミクスを合わせた造語は、古くはアメリカの第40代大統領ロナルド・レーガンの「レーガノミクス」の例があります。

レーガノミクスでは経済活動におけるさまざまな規制を撤廃し、社会保障と軍事費の増大を実現しました。

アベノミクスの政策

アベノミクスの「3本の矢」
<引用元:首相官邸ホームページ|アベノミクス「三本の矢」

アベノミクスの根幹を成す政策は3つあり、まとめて「3本の矢」と呼んでいます。

「3本の矢」というと、毛利元就が3人の息子に協力することの重要性を説いたエピソードが有名ですが、アベノミクスとの関連性はありません。

「3つの経済政策」で、鋭く日本経済に影響を与えるというニュアンスを表すために「矢」という言葉を使い、そこから「3本の矢」という呼称が付けられたといいます。

「3本の矢」の内容

アベノミクスの「3本の矢」は、経済成長を目的とした以下の政策を掲げています。

  • 大胆な金融政策
  • 機動的な財政政策
  • 民間投資を喚起する成長戦略

それぞれに具体的な施策が実施、または見送られています。

第1の矢・大胆な金融政策

アベノミクスが放つ第1の矢は「大胆な金融政策」です。

金融政策とは、中央銀行がお金の量を増減することで社会での流通量を調整したり、金利を調整したりすることです。

安倍内閣は1990年代以降の経済衰退の原因はデフレ経済にあると断じ、デフレを脱却するために、流通するお金の量の増加を実現する大胆な金融政策が必要だとしています。

「大胆な金融政策」の具体策として

  • 2%のインフレ目標
  • 無制限の量的金融緩和
  • 円高の是正と、そのための円流動化
  • 日本銀行法改正

などが提示されました。

「大胆な金融政策」の具体策|インフレと量的金融緩和

「2%のインフレ目標」のインフレとは、物価が上昇する経済現象「インフレーション」を指します。

経済がインフレ状態になると、

  • 1.物価が上がると、企業が販売価格の上昇で儲かる
  • 2.雇用や社員の給料が増える
  • 3.消費者は物価上昇によって生活費が増えるが、給料も増えているので、購買活動が活発になる
  • 4.社会の購買活動が活発になると、商品がよく売れるので企業が儲かり、雇用や給料増加につながっていく

という流れになります。

これを「良いインフレ」といい、経済成長には良いインフレ状態を保つ必要があるとされています。

逆に「悪いインフレ」は、

  • 1.商品の原価は高騰しているのに商品価格に上乗せできない
  • 2.企業の業績は悪化し、リストラや賃金ダウンが発生する
  • 3.消費者の購買活動が停滞していく
  • 4.商品が売れないので企業の業績は悪化していく

という悪循環を指します。

良いインフレにするために、「無制限の量的金融緩和」が実施されます。

日本銀行(中央銀行)が、市場に供給する通貨量を増やす政策です。

市場への通貨供給量が増えると、銀行など各地の民間金融機関が融資をしやすくなり、一般企業は設備投資・事業拡大の資金が得やすくなります。

「大胆な金融政策」の具体策|円高の是正と日本銀行法改正

「円高の是正」とは、ドルなどの外貨に対して「円」の価値が高くなっている状態(円高)を、適切な価値に正すことを指します。

例えば、昨日1ドル500円だった物が、今日200円になっていたら、昨日に比べて「円高・ドル安」になっています。

「1ドル」に対し、「円」の数が大きくなるほど「円安」、小さくなるほど「円高」になる、とすると覚えやすいです。

円高状態だと、輸入や海外旅行には有利ですが、輸出には不利です。

逆に、円安状態だと、輸入は不利になりますが、輸出がしやすくなったり海外からの旅行客が訪れやすくなったりします。

日本は、主に輸出産業によって経済を発展させ、現在は観光立国として海外からの旅行者を招いていますので、円安状態を都合が良いとして「円高の是正」政策が実施されています。

実際、民主党が政権を持った時代の2012年9月頃、為替レートは78円台でした。

2019年9月現在、為替レートは107円台を推移しています。

なお、「日本銀行法改正」は、アベノミクスの賛同者である黒田東彦を日本銀行の総裁に任命できたことで、2019年現在は検討・実施されていません。

第2の矢・機動的な財政政策

耐震工事

第2の矢は「機動的な財政政策」です。

第二次安倍内閣が始まってすぐの2013年1月15日に放たれました。

経済対策のために政府が10兆円規模の支出をすることで、雇用のニーズを生み出し、経済活動の活性化を目指します。

主な政策としては、以下のものが挙げられます。

  • 大規模な公共投資(国土強靱化)
  • 日本銀行の買いオペレーションを通じた建設国債の買い入れ・長期保有(ただし国債そのものは流動化)

機動的な財政政策の具体策|大規模な公共投資

「大規模な公共投資(国土強靱化)」では、東日本大震災の復興と耐震事業が中心になっています。

気象庁の発表によると、東日本大震災から2019年9月現在まで、震度6弱以上の地震は26回発生し、そのうち震度7以上は4回です。

震災が起きれば、インフラや各設備などの修繕や改修をおこなう必要があり、それらを財政政策の一環として実施するわけです。

また、「再生医療の実用化支援」のようなプロジェクトについても、雇用の拡大と経済の活性化につながる事業として多額の資金が投入されました。

機動的な財政政策の具体策|建設国債の買い入れ・長期保有

「大規模な公共投資(国土強靱化)」を進めるためには、多額の費用が必要です。国家は、公共投資の費用を「国債」を用いて獲得します。

国債とは、国が発行する債券「国庫債券」の略称で、国家が資金を調達する方法の1つです。

投資家が国債を購入すると、国が設定した金利を6か月に1回受け取れます。同じく国が設定した期間に達する(満期)と、元本が返ってきます。
この場合、国は国債を購入した投資家からお金を借りた、と言えます。

「建設国債の買い入れ・長期保有」では、投資家ではなく、日本銀行が国債を購入します。

国は得られた資金を、公共投資・建設などの費用に当てます。

日本銀行は、投資家よりも大量の国債を購入できますし、安定して長期保有ができるので、国家は公共投資の資金を堅実に確保できます。

公共投資の結果で、産業や人の動きが活発になって税収が増えれば、国債の金利も回収できるという計算です。

第3の矢・民間投資を喚起する成長戦略

経済成長のイメージ画

第3の矢は「民間投資を喚起する成長戦略」です。

具体的には、金融規制などを緩和して、民間企業や個人が投資しやすい環境を作ることを指しています。

「民間投資を喚起する成長戦略」には、以下のことについて言及されました。

  • 「健康長寿社会」から創造される成長産業
  • 全員参加の成長戦略
  • 世界に勝てる若者
  • 女性が輝く日本

民間投資を喚起する成長戦略のビジョン

「健康長寿社会」から創造される成長産業では、

  • 世界最高水準の医療提供
  • 新しいヘルスケアサービスの発展
  • 日本の医療サービスを海外にも展開

などが推進されています。

また、高齢者の増加が社会問題になっている現代では、「健康長寿社会」を目指すことは健康志向による保険料高騰の抑制や労働人口の確保につながります。

「世界に勝てる若者」や「女性が輝く日本」も、新ビジネスを起業できる若者や女性の社会進出とあわせ、「全員参加の成長戦略」として「一億総活躍社会」の実現になるよう取り組まれています。

「財政健全化」は第4の矢?

ドル札と聴診器

安倍首相は、2020年に開催される東京オリンピックについて「ある意味で第4の矢の効果がある」と発言し、デフレ脱却と経済成長の上で東京オリンピックが重要な位置を占めていることに言及しました。

実際に東京オリンピックを前に、宿泊施設の増加やパンフレットや看板に外国語表記を加えるといったインバウンド事業が盛んになり、地価の上昇や建設業の活性化が見られています。

しかし、安倍首相は、あくまでも「ある意味で第4の矢の効果がある」と述べただけで、東京オリンピックが第4の矢であると明言したわけではありません。

3本の矢による経済成長の成果が思わしくないときに、いよいよ本命の第4の矢が放たれることになるでしょう。

現在、第2の矢である政府支出の増大などにより、日本の国家収入と支出のバランスの乱れが問題となっています。

財政健全化を図ることを第4の矢とすべきという声も政財界から上がってきています。

第4の矢が経済成長にブレーキをかける?

2019年10月に、増加する国家予算を補うために消費税の増税が施行されます。

支出が増えれば財源を確保しなくてはならないのは当然のことですが、増税によって国民の消費活動にブレーキがかかると、「消費の拡大→企業の財政改善→投資の拡大→賃金増加」の理想的なスパイラルが機能しなくなる恐れがあります。

財政健全化は必要なことですが、健全化することと経済活動にブレーキをかけることは表裏一体であるという点を忘れてはいけません。

アベノミクスの実績

アベノミクスの実績

経済成長を目的とするアベノミクスの3本の矢は、実質GDPの増大や有効求人倍率の上昇、企業の倒産件数の低下などの効果を上げています。

自民党公式サイト内の『アベノミクス6年の実績』では、

  • 若者の就職内定率が過去最高水準

大学就職内定率:97.6%、高卒就職内定率:98.2%。

  • 中小企業の倒産が28年ぶりの低水準

2012年では12,077件だった倒産件数が、2018年では8,235件。

  • 正社員の有効求人倍率が史上初の1倍超え

2012年12月では0.50倍だった倍率が、2019年4月では1.16倍。

  • 家計の可処分所得が4年連続増加

2012年では292.7兆円だった所得が、2017年では302.1兆円。

  • 国民総所得が過去最高

2012年10~12月期では506.8兆円だった総所得が、2019年1~3月期では573.4兆円。

などの情報が公開されています。

アベノミクスは失敗という声もある

「アベノミクスは失敗」という意見も出ています。

物価は上昇し、デフレからの脱却は進んでいるかのようでも、賃金や消費の回復スピードが遅いため、景気の好循環を作るだけの力が不足しているという見解です。

日本銀行が掲げる2%の物価安定目標も、実際は未達成です。

2019年4月、日本銀行の黒田東彦総裁は会見で「21年度に2%に達する可能性は低い」と述べています。

そこに、2019年10月からの消費税増税で、日本経済にダメージを与えてしまい、アベノミクスは失敗するのではないかという不安視が広がっています。

アベノミクスは道半ば!現時点では成果を断ずることは不可能

アベノミクスは、まだ終わったわけではありません。
消費税増税という国民に痛みを与える施策を実施することで、今後、日本経済がどのように動くのかについては予想すら不可能です。

増税により一時的に経済が衰退するものの長期的には支出増大が実現できる可能性もありますが、経済衰退が長期化する恐れも充分にあります。

我々国民も、アベノミクスにおいて実施される施策1つ1つを個々に評価したり、出所不明の情報に踊らされたりするのではなく、それぞれの施策がどのように連携してどのような実を結ぶのか包括的に見る必要があるのです。

アベノミクスは安倍政権の一連の経済政策

アベノミクスは、安倍政権が掲げる一連の経済政策を指します。

2020年にはアベノミクスの中でも重要な位置を占める東京五輪が開催され、関連事業の活性化が期待されます。

オリンピックや各政策によって日本経済はどう変わるのか、国民一人ひとりが長期的視野に立ってアベノミクスの効果を見守っていきましょう。