ポピュリズムとは?大衆迎合と民主主義との違いをわかりやすく解説
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近年、よく耳にする言葉の1つに「ポピュリズム」があります。
英語でpopularといえば「人気がある」という意味ですから、ポピュリズムも何かポジティブなイメージを持つかもしれません。
ポピュリズムとは何か、そして、よく似た意味でつかわれることが多い「民主主義」とは何が違うのかについて詳しく解説します。
目次
ポピュリズムとは
ポピュリズムとは、大衆の希望や利益を叶えることを前面に打ち出し、大衆の支持を集めようとする政治姿勢を指す言葉です。
日本語で「大衆主義」と訳することもありますが、「ポピュリズム」と言うほうが一般的です。
たとえば、選挙活動のときに政治家が有権者の支持を集めるために「大勢の人々が望んでいそうなこと」を声高に主張することは、ポピュリズムの1つです。
単に支持率を伸ばすために大衆におもねった発言をおこなうことも多いため、「大衆迎合主義」と揶揄されることもあります。
ポピュリズムの特徴
ポピュリズムでは、まず、人々を3つに分けます。
- 傍観者としての政治家
- 社会的に不利益を受けてきた善良な大衆
- 社会で利益を独占してきた資産家や知識人などの、大衆には分類されない人々
そして、政治家は「資産家や知識人などは特権階級で、善良で無知な大衆は大きな損を被っている」と主張します。
政治家自身は、大衆側でも特権者側でもなく傍観者としてニュートラルな立場にいるとアピールし、大衆に「自分たち大衆は、客観的に見て不遇な状況にある」と思わせるのです。
政治家によっては、自分自身が大衆を代表しているとの立場を取り、「エリートだけ利益を得られる今の世の中は間違っている」と大衆に訴えかけます。
ポピュリズムかどうかは、次のポイントで見分けることが可能です。
<ポピュリズムかどうかを見分けるポイント>
- 既存の政権や一部の特権階級と思われる人々への怒りを強く訴える
- 対立構造をアピールする
- 政治家が自分自身を特権階級の中にいないように見せかける
- 「どのような政治を目指すか」ではなく「何を変えるのか、何を壊すのか」について語る
- カリスマ性がある
- 話す相手や地代の流れによって主張が変わる(=主張に一貫性がない)
政治家の主張あるいは政治家自身が、ポイントに複数当てはまっているときはポピュリズムの1つと考えることができるでしょう。
ポピュリズムと民主主義との違いは?
「大勢の人々が望む政治をおこなう」という点では、ポピュリズムも民主主義も同じです。
しかし、政治に携わる人が「有権者は〇〇を望んでいるだろう」を推測して発言するポピュリズムと、政治に携わる人自身が「有権者が幸せになるためには何をすればよいだろう」と考えて政策を立てる民主主義とでは、目指す政治が異なります。
その他の違いについては、以下をご覧ください。
ポピュリズム | 民主主義 | |
---|---|---|
目指す政治 | 大多数の人の意見を反映する政治 | 国民の幸せを追求する政治 |
政治家のビジョン | なし | あり |
政治家のアピール | 自分が大衆の代表者だとアピール | マニフェストの実現をアピール |
ポピュリズムのメリット
簡単に言えば、ポピュリズムとは大衆に迎合し、大衆から支持を集める政治です。
「政治家自身の信念が希薄で、単に大衆にすり寄っているだけ」と揶揄されることがありますが、メリットがまったくないというわけでもありません。
ポピュリズムが政治にもたらすメリットとしては次の2点を挙げられます。
<メリット>
- 政治に無関心だった人の興味を引き起こす
- 大勢の人々のニーズに合う改革が実現できる
政治に無関心だった人の興味を引き起こす
政治にまったく無関心な方も少なくありません。
とりわけ日本は比較的生活や経済が安定しているため、政治に無関心な人が多いと言われています。
しかし、中には「政治に興味を持ってもどうせ何も変わらない」というあきらめの気持ちで、政治に無関心になっているだけのこともあるでしょう。
ポピュリズムには、大衆が身近に感じる問題を取り上げるという側面があります。
今まで政治に関心を持ったことがない方でも、より身近な問題や常日頃から不満に思っていた問題に焦点が当たることで、政治に関心を抱くようになることがあるのです。
大勢の人々のニーズに合う改革が実現できる
政治家が国民の幸せを考えて、政策を作り、実現に向けて実行してくれることは、確かに長期的に見れば国民にとって大きな利益です。
たとえば、来るべき超高齢化社会に備えるために増税をおこなうことも、長期的に見れば正しいことなのかもしれません。
しかし、長期的な視野に立つことよりも、「今」の時点での変化を求めている方も多いです。
ポピュリズムでは大衆の「今」のニーズや気持ちをくみ取るため、今すぐ利益を得たい方や目に見えるメリットを求めている方には、優れた政治として受け止められることがあります。
ポピュリズムのデメリット
ポピュリズムのデメリットとしては、次の2点を挙げられます。
<デメリット>
- 少数派の意見が反映されにくい
- 人々に対立構造を意識させる
ポピュリズムは、すべての人々が満足する政治を目指す考え方ではありません。
あくまでも大多数の人の歓心を得るための考え方のため、少数派の意見が反映されにくいというデメリットがあります。
また、「大衆 VS 特権階級」のように世の中が対立構造で成り立っているかのような思想を人々に植え付けます。
恵まれた立場の人を仮想敵にすることで危機感をあおって大衆の気持ちを団結させるという点は、ポピュリズムならではのデメリットと言えるでしょう。
ポピュリズムは世界的にはどのような状況か
たとえばアメリカのトランプ政権は、ポピュリズムの代表的なものといわれています。
トランプ大統領自身は富豪で特権階級に属していますが、中国などの経済的な脅威を与える国々を仮想敵として、貿易制裁などの大衆が支持しやすい政策を発表・実現しています。
また、イギリスのEU離脱のように大衆の支持を集める行為や、イタリアのコンテ政権のようにポピュリズムを前面に打ち出した政治方針など、とりわけ欧州ではポピュリズムが見られる傾向にあります。
日本でのポピュリズムはどのような状況か
日本もポピュリズムと無縁ではありません。
たとえば、NHK視聴料について不満を持っている層をターゲットとした「NHKから国民を守る党(N国)」や障害者の政治参加に焦点を当てた「れいわ新選組」などの政党はポピュリズムの一例です。
「NHK VS 国民」「国 VS 障害者」といった分かりやすい対立構造をアピールし、弱者を守るためという大義名分を掲げて政治の指針としています。
また、メディア受けのよい言葉や政策を口にすることが多い小泉進次郎氏もポピュリズムの影響を受けている政治家と言えます。
ポピュリズムと民主主義の違いをおさえておこう
ポピュリズムは民主主義とは異なり、長期的ビジョンに基づかない政治の方針です。
目の前の問題を解決することも大切ですが、どのような国を目指すのかというビジョンを持っていることも大切です。
政治家のインタビューを見るときは、単に支持率を集めたいのか、それとも長期的視野があるのかという点に注目してみましょう。