時短ハラスメントとは?ジタハラの意味・事例・対策と働き方改革

セクハラやマタハラなど、さまざまなハラスメント(嫌がらせ行為)が問題視されています。

その中でも最近問題化しているのが「時短ハラスメント(ジタハラ)」です。

ジタハラとは何か、どのような対策ができるのかについてまとめました。

時短ハラスメント(ジタハラ)とは

時間で追い詰められて頭を抱えている会社員

時短ハラスメント(ジタハラ)とは、「残業しないで定時に退社するように」と圧力をかけることを指します。

「残業しない」「定時に退社する」とだけ聞くと、ハラスメントには該当しないように感じるかもしれません。

しかしながら、実際のところは仕事内容が多いにも関わらず早い時間に退社させようと圧力をかけるため、従業員にとっては厳しい状態になってしまいます。

勤務時間に仕事が終わらず、しかも残業を禁じられているとなると、以下のような好ましくない状態が起こります。

<時短ハラスメントを受けると…>

  • 仕事を家に持ち帰らなくてはならなくなる
  • 昼休みや早朝に仕事をしなくてはならなくなる

時間外労働をおこなうという点では「残業」と同じです。

しかし、時短ハラスメントは、残業手当がつかない分、経済的にも厳しい状況に追い込まれやすいのです。

時短ハラスメントの事例:自動車販売店店長自殺

千葉県にある自動車販売店の店長のケースは、時短ハラスメントを世間に知らしめる出来事として認識されています。

社長から「従業員を残業させるな」と繰り返し圧力を受けていた店長は、残業削減を目指して従業員と話し合いをおこないました。

しかし、具体的な解決策が出なかったため、店長一人で従業員の残業分の仕事も抱えることになってしまったのです。

店長は過労から、不眠や自殺未遂などを引き起こすようになります。

医師からは「ストレス性うつ」と診断され、会社も徐々に休みがちになりました。

しかし、会社側は無断欠勤を理由に懲戒免職処分を下し、店長を事実上切り捨てます。

店長は解雇無効を主張して裁判を起こしましたが、2016年12月、裁判中に命を絶ってしまいました。

時短ハラスメントが起きやすい環境

近年、労働環境が良くない企業を「ブラック企業」と呼ぶようになりました。

とりわけ「残業時間が長い職場はブラック企業だ」との認識が広まっているため、多くの会社で残業時間を減らす取り組みが行われています。

残業時間を減らすこと自体は良いことですが、仕事量が同じまま、あるいは、労働時間を減らす対策をおこなわないまま「残業時間をなくすように」と命令するのでは、従業員は困惑します。

持ち帰りの仕事が増えたり残業手当がなくなったりする可能性があり、「残業時間を減らすように」との命令がないときよりも労働条件が悪化する恐れがあります。

とりわけ以下の状態が見られる職場では、時短ハラスメントが起こりやすいと言えるでしょう。

<ジタハラが起こりやすい職場>

  • 上司が命令をするだけで解決策を提示しない
  • 上司と部下の垣根なく部署全体で話し合う習慣がない
  • 急な仕事が多い
  • サービス残業が日常化している
  • 上司が精神論で仕事を捉えている

ブラック企業については、こちらの記事もあわせてご覧ください。
ブラック企業とは?10の特徴と求人の見分け方

時短ハラスメント誘発の要因は「働き方改革」という言葉だけの先行

「働き方改革」と書かれた小さな黒板

時短そのものは会社のあるべき姿です。

企業側は従業員の労働環境に対して常に配慮しなくてはなりませんから、労働時間を短縮して個々の負担軽減に努める必要があります。

しかし、働き方改革の名前の下、「残業をなくすこと」だけが目標となってしまうと、労働量と労働時間のバランスが崩れてしまいます。

労働時間を短縮することを職場の方針として掲げるのなら、「どのように仕事の効率を高めるのか」、そして、「各自どのような点に注意が必要なのか」を具体的に従業員に説明する必要があるのです。

時短ハラスメントが起きない、あるべき企業・あるべき「働き方改革」

時短ハラスメントを起こさないためには、職場倫理を徹底させる必要があります。

タイムカード上の残業時間がなくなっても、持ち帰りの仕事や早朝・昼休みの仕事が増えるのでは、本当の意味で時短が成功したとは言えません。

また、「頑張れば目標を到達できる」といった精神論で問題を解決しようとするのではなく、作業分担や命令系統を見直すなどの具体的かつ論理的な解決方法を提示することも必要です。

作業効率が良くなるように従業員がアイデアを出し、楽しくビジネスに取り組めるように工夫します。

時短ハラスメントを回避するために、以下の取り組み例が有効とされています。

<時短ハラスメントを起こさない働き方改革の例>

  • 適正な仕事の量以上を従業員に割り振らない
  • 時間的余裕を持って納期を設定する
  • 仕事量を減らせないときは従業員を増やす
  • 残業や持ち帰りの仕事を管理・報告しやすい環境をつくる

時短ハラスメント対策!労働者側ができること

メガホンで声をあげている会社員

すべての会社が正しく「働き方改革」を理解し、従業員の福祉に配慮した改革に取り組んでいるなら、時短ハラスメントは起こりにくいでしょう。

しかし、現実には、働き方改革の意味を取り違え、時短ハラスメントが横行する職場も少なくありません。

時短ハラスメントを受けたときは、労働者側は次の順番で対処していきましょう。

<職場で時短ハラスメントが起こっているとき>

  1. 上司や同僚に相談する
  2. 社内の従業員相談窓口で相談する
  3. 社内に労働組合がある場合は相談する
  4. 労働基準監督署に相談する

心身を壊す前に労働基準監督署や労働局の活用も考えよう

「まだ大丈夫」と小さな無理を重ねていくことで、心も体も壊れてしまうことがあります。

明らかに無理な仕事量を押し付けられたときは、上司や同僚に相談し、状況を理解してもらいましょう。

理解を得られないときは、社内の従業員相談窓口で相談するようにしてください。相談窓口がないときは労働組合に声をかけてみましょう。

労働組合がない場合は、労働基準監督署や総合労働相談コーナーに相談し、会社でおこなわれていることが本当にハラスメントに該当するのかアドバイスをもらいましょう。

実際にハラスメントに該当すると判断されるときは、労働基準監督署から直接会社に改善を勧告してもらうこともできます。

時短ハラスメントは、一人で悩んでいても解決はできません。

また、すぐに転職することでも、根本的な解決は図れません。

まずは誰かに相談すること、そして、無理をしないように生活のバランスを保つことを心がけてください。

<参考:厚生労働省「総合労働相談コーナー」

時短ハラスメントを感じたら業務内容や職場環境を見直そう

働き方改革は、従業員が働きやすい環境をつくるためにおこなわれるものです。

「残業するな、しかし仕事は減らすな」では労働環境が悪化して当然です。

時短ハラスメントを感じたら、まずは仕事の効率化を図り、難しいときは上司や同僚に相談した上で企業の相談窓口や労働基準監督署に相談して早期解決を目指しましょう。