奨学金の繰り上げ返済のデメリットとは?損しないためには
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日本学生支援機構(JASSO)の奨学金には、繰り上げ返済制度があります。
繰り上げ返済制度を利用すると返済期間が短くなり、その分、利息も減りますが、実はメリットばかりというわけでもないのです。
奨学金を繰り上げ返済するデメリットと損をせずに奨学金を返済する方法について解説します。
目次
奨学金についておさらい
奨学金を利用している方の大半は、日本学生支援機構(JASSO)の奨学金を利用しています。
日本学生支援機構の奨学金には給付型と貸与型があり、給付型は返済不要で、貸与型は返済が必要です。
また、貸与型には無利息の第一種奨学金と有利息の第二種奨学金があります。
なお、給付型は世帯収入の基準が貸与型より厳しく、給付型のなかでは第二種奨学金よりも第一種奨学金のほうが世帯収入基準は厳しくなっています。
成績の水準も、第一種奨学金と給付型奨学金は第二種奨学金と比べて厳しくなります。
<奨学金のタイプによる申し込み基準の違い>
給付型奨学金 | 貸与型・第一種 | 貸与型・第二種 | |
---|---|---|---|
3人世帯の世帯収入 | 221~373万円以下 (137~234万円以下) |
657万円以下 (286万円以下) |
1,009万円以下 (601万円以下) |
4人世帯の世帯収入 | 271~378万円以下 (172~255万円以下) |
747万円以下 (349万円以下) |
1,100万円以下 (692万円以下) |
5人世帯の世帯収入 | 421~561万円以下 (307~409万円以下) |
922万円以下 (514万円以下) |
1,300万円以下 (892万円以下) |
成績の基準 | 3.5以上 | 3.5以上 | 平均以上 |
※収入水準は2019年時点の給与所得者の場合です。括弧内の数字は、給与所得者以外の収入水準です。
※給付型奨学金は、支給額や住民税非課税かどうかによって収入基準が変わります。
奨学金の利息
第一種奨学金を借りている方は、繰り上げ返済をしても返済期間が短くなるだけで、利息削減効果はありません。
しかし、有利息の第二種奨学金を借りている場合は、卒業すると利息が発生し、返済期間が長引けば長引くほど総利息額は高くなります。
利息を少しでも減らしたい方は、繰り上げ返済を利用できます。
なお、日本学生支援機構の奨学金は、第一種も第二種も在学中は利息が発生しません。
奨学金繰り上げ返済のデメリット
貸与型の第二種奨学金を利用している方は、繰り上げ返済をして利息を減らすほうがお得なことは確かです。
奨学金は借金の1つですから、少しでも早く返済したいと考えるのは自然なことと言えるでしょう。
しかし、実際のところ、「無理にでも繰り上げ返済すべき」と言えるほどにはお得ではありません。
奨学金を繰り上げ返済することには、次の5つのデメリットがあるのです。
デメリット1:手持ちの現金がなくなる
繰り上げ返済には残額を一括で支払う「全額繰上返還」と一部分だけ支払う「一部繰上返還」の2つがあります。
いずれの繰り上げ返済を選択する場合も、2ヶ月分以上の返済額を一気に支払うわけですから、手持ちのお金が一気に減ってしまいます。
お金がなくなると、急な出費に備えられません。
病気やけがで数ヶ月休職して収入が減ってしまう恐れもありますし、自動車の修理や結婚式への参列などのまとまったお金が必要になることもあるでしょう。
繰り上げ返済をしてしまったばかりに、手持ちのお金が足りず、高金利のカードローンなどでお金を借りることにもなりかねません。
デメリット2:1ヶ月以上前から手続きが必要
繰り上げ返済をするときは、口座振替を実施する1~4ヶ月前に手続きをしておかなくてはいけません。
奨学金専用のネットサービス「スカラネット・パーソナル」を活用するとインターネット経由で手続きができますが、申告する内容が多く、手間がかかってしまいます。
また、スカラネット・パーソナルを利用しないときは、郵便やファックスで申し込みますが、スカラネット・パーソナル以上に手間がかかります。
デメリット3:利息があまり減らない
「繰り上げ返済をすると利息が劇的に減る」と思い込んでいる方もいますが、元々奨学金は低金利のため、繰り上げ返済をしても利息はそこまで減りません。
例えば、2019年5月に奨学金の貸与が終わった学生は、利率固定方式なら年0.146%、利率見直し方式なら年0.001%の金利が適用されます。
240万円を借りて15年(180ヶ月)で返済する場合と途中10ヶ月分を繰り上げ返済する場合の利息は以下の通りです。
<10ヶ月分を繰り上げ返済したときの利息の違い>
利率固定方式 | 利率見直し方式 | |
---|---|---|
毎月返済した場合 | 52,560円 | 360円 |
10ヶ月分を繰り上げ返済した場合 | 49,640円 | 340円 |
繰り上げ返済で節約した利息 | 2,920円 | 20円 |
※利率見直し方式は途中で利率が変更される可能性がありますが、便宜的に最初の金利で計算しています。
10ヶ月分を繰り上げ返済しても、実際に節約できるのはわずか数十円~数千円です。
2019年5月時点のように超低金利のときは、ごくわずかな節約効果しか得られません。
デメリット4:貨幣価値の変化に逆行する
定額返済方式で返済する場合、毎月の返済額は常に一定です。
つまり、毎月20,000円ずつ返済している方なら、将来的にも毎月20,000円ずつ返済します。
世界経済はゆるやかにインフレ方向に進んでいますので、10年後の20,000円の価値は現在の20,000円の価値よりも低いと予想されます。
無理に今すぐ多額を返済するのではなく、ゆっくりと返済するほうがお得と言えるでしょう。
デメリット5:奨学金ならではの低金利を活かせない
将来的に家や車を購入したいと考えているなら、お金に余裕があっても奨学金を繰り上げ返済することはおすすめできません。
余裕のある分は住宅や自動車の頭金にまわし、民間のローンで借りる金額を少しでも減らしましょう。
民間の金融機関で、奨学金ほどの低金利で貸してくれる業者はありません。
せっかく低金利で借りたのですから、賢く活用していきましょう。
奨学金繰り上げ返済のメリット
奨学金の繰り上げ返済にはデメリットが多いため、通常は、繰り上げ返済せずにそのまま返済し続けることをおすすめします。
しかし、奨学金を繰り上げ返済しても充分に預貯金が残るときには、繰り上げ返済をするのも良いことです。
繰り上げ返済をすると返済期間が短縮できますし、返済期間を短縮した分、利息を節約できます。
また、早期に完済するなら、奨学金の返済を滞納する恐れがなくなりますし、連帯保証人に迷惑をかけてしまうリスクもなくなります。
奨学金の繰り上げ返済はデメリットを知ったうえで行おう
高金利のローンを利用しているときは、少しでも繰り上げ返済をして利息を減らすほうがお得です。
しかし奨学金は低金利ですので、繰り上げ返済しても利息削減効果はあまりありません。
繰り上げ返済をする前に、紹介した5つのデメリットを今一度吟味してください。