扶養控除申告書の書き方と注意点を画像を交えて解説します
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年末調整のときに勤務先から渡される「扶養控除申請書」は、扶養する家族の有無に関わらず、正しく記入して提出しなくてはなりません。
提出しないと税金が増えて手取りが減るだけでなく、確定申告の手間が増えてしまいます。
書き方と注意点をまとめたので、ぜひ参考にしてください。
目次
扶養控除申告書とは
扶養控除申告書とは、正式には「給与所得者の扶養控除等(異動)申告書」と言います。
扶養控除とは、養っている家族がいるならば税負担を軽くできる制度で、控除額の多さに比例して、納税額を抑えることができます。
扶養控除申告書は、その名の通り扶養控除があるかどうかを申告するための書類で、扶養控除があるときは源泉徴収税額が減りますので、結果的には所得税も減ります。
また、扶養する家族がいるかどうかに関わらず扶養控除申告書を提出すると、「給与所得者の源泉徴収税額票」の甲欄にある税額が適用されます。
一方、扶養控除申告書を提出しない場合は、「給与所得の源泉徴収税額票」の乙欄にある税額が適用されます。
甲欄の税額は乙欄の税額よりも高額ですので、提出しないだけで所得税が高くなってしまうのです。
扶養控除の対象になる人
扶養控除の対象となる範囲は、配偶者と扶養家族です。
扶養控除の対象となるには、以下のすべての条件にあてはまる必要があります。
- 以下のいずれかであること
- 配偶者以外の親族(6親等内の血族及び3親等内姻族)
- 都道府県知事から教育を委託された児童(里子)
- 市長村長から養護を委託された老人
- 納税者と生計を一にしている(同居)こと
- 年間所得が38万円以下(給与収入だと103万円以下)
- 青色申告者の事業専従者としてその年を通じて一度も給与の支払を受けていないこと、又は、白色申告者の事業専従者でないこと
- 16歳以上の人
配偶者控除の対象となるには、以下のすべての条件にあてはまる必要があります。
- 民法上で配偶者であること
- 納税者と生計を一にしていること
- 年間所得が38万円以下(給与収入だと103万円以下)
- 青色申告者の事業専従者としてその年を通じて一度も給与の支払を受けていないこと、又は、白色申告者の事業専従者でないこと
- 納税者の合計所得が1,000万円を超えていないこと(会社員の場合は、給与が1,220万円を超える場合)
配偶者が38万円以上(令和2年以降は48万円になります)の所得があると、配偶者特別控除が適用され、配偶者の所得に応じて所得控除をうけられる場合があります。
ちなみに、「収入」は働いてもらった給与のこと。自営業は売上が収入になります。
「所得」は、収入から「必要経費=給与所得控除」がひかれた金額のことです。
扶養控除申告書を提出する人
扶養控除申告書を提出するのは、所得税が発生するすべての方です。
つまり、正社員だけでなくパートやアルバイトの非正規雇用の方も、勤務先から扶養控除申告書を渡されたときは、正しく記入して提出しなくてはなりません。
なお、勤務先が2つ以上ある場合は、扶養控除申告書は1ヶ所にしか提出できません。
給与が高額なほど控除される源泉徴収税額も大きくなりますので、もっとも高額な給与を受け取っている事業所に扶養控除申告書を提出してください。
扶養控除申告書の提出時期
勤務先から扶養控除申告書を渡されたときは、できるだけ早く必要事項を記入して提出してください。
すぐに提出できない場合でも、年度の最初の給与を受け取るときまでには提出しておきましょう。
例えば平成31年度分の扶養控除申告書なら、平成31年の最初の給料日までには提出することが望ましいです。
勤務先が定めている提出時期を逃すと、扶養控除の手続きは自分で確定申告しないとできなくなってしまいます。
手間を省くためにも、提出期限を守りましょう。
年末調整時以外にも扶養控除申告書を提出することがある
また、年末調整の時期以外にも以下のタイミングで扶養控除申告書の提出が要請されることがあります。
扶養控除申告書の提出が 必要になるタイミング |
・年末調整 ・就職したとき ・扶養家族の人数に変更が生じたとき |
---|
年末調整と就職したときは、勤務先側から扶養控除申告書を提出するようにと知らせてくれます。
しかし、扶養家族の人数に変更が生じたときは、従業員側から勤務先に「扶養控除申請書を提出したい」と要請しなくてはいけません。
申告時期がずれてしまうと勤務先側の手続きが煩雑になるだけでなく、自分で確定申告をしなくてはならないケースもあります。
給与所得者の扶養控除等(異動)申告書の書き方
節税のためにも、また、確定申告の手間を省くためにも、「給与所得者の扶養控除等(異動)申告書」を正しく記入して提出しましょう。
国税庁のホームページからも、ダウンロードできます。
国税庁HP:令和2年分給与所得者の扶養控除等(異動)申告書
ところで、給与所得者の扶養控除等(異動)申告書は、上から、「基本情報欄」と「扶養控除申告欄」「住民税申告欄」の3つの部分に分かれています。
扶養する家族がいない方は最上部の基本情報欄だけ記入すればOKです。
扶養する家族がおり、なおかつその家族が16歳以上のときは基本情報欄と扶養控除申告欄、扶養家族が16歳未満のときは基本情報欄と住民税申告欄を記入します。
それぞれの欄の記入方法については以下の通りです。
基本情報欄
基本情報欄は、扶養控除申告書を提出するすべての方が記入しなくてはいけない部分です。
ただし、左上の「税務署長」と「給与支払者の名称」「給与支払者の法人(個人)番号」「給与支払者の所在地(住所)」の4項目は事業所側が記入してくれます。
納税者が記入するのは残りの以下の項目だけです。
<基本情報欄中の納税者が記入する項目と書き方>
記入項目 | 書き方、注意点 |
---|---|
市区町村長 | ・納税者の住民票がある地域の市区町村名を記入 ・基本情報欄の左下にあり、見落としがちなので注意が必要 |
あなたの氏名 | ・納税者の氏名と認印 ・勤務先で使用している氏名ではなく住民票上の氏名を記入 |
あなたの個人番号 | ・12桁の個人番号 |
あなたの住所又は居所 | ・納税者の住民票の住所もしくは現在の居住地 |
あなたの生年月日 | ・該当する元号を〇で囲み、元号表示で生年月日を記入 |
世帯主の氏名 | ・納税者の世帯の世帯主名 ・名字が同じ場合も姓名を記入 |
あなたとの続柄 | ・納税者から見た世帯主の続柄 ・父親が世帯主のときは「父」、納税者が世帯主のときは「本人」 |
配偶者の有無 | ・有か無を〇で囲む |
従たる給与についての扶養控除等申告書の提出 | ・複数の事業所から給与を受け取っている場合、別の事業所で扶養控除申告書を提出したときは〇を記入 |
扶養控除申告欄
16歳以上の扶養する家族がいる場合でも、扶養控除申告欄のすべてを記入する必要はありません。
それぞれの項目に記入する条件と書き方を解説しますので、必要な項目のみ記入してください。
源泉控除対象配偶者欄に記入する場合
控除を受けるには、下記2つの条件をどちらも満たしている必要があります。
- 本人の所得見積額が900万円以下
- 配偶者の所得見積額が85万円以下
源泉控除対象配偶者欄には、配偶者についての情報を記入します。
配偶者が1年以上国外にいる場合は「非居住者である親族」の欄に〇を記入する必要があります。
控除対象扶養親族欄に記入する場合
控除を受けるには、下記の全ての条件を満たしている必要があります。
- 扶養親族が16歳以上
- 同一生計の親族か里子、養護老人
- 扶養親族の年間の合計所得が38万円以下(給与のみの場合は給与収入が103万円以下)
- 青色申告者の事業専従者として給与の支払いを受けていない
- 白色申告者の事業専従者でない
控除対象扶養親族欄には、扶養親族についての情報を記入します。
各親族について納税者から見た続柄を記入してください。
特定扶養親族とは19歳以上23歳未満の扶養親族のことです。
扶養親族が1年以上国外にいる場合は「非居住者である親族」の欄に〇を記入する必要があります。
扶養家族が別居中のときは「生計を一にする事実」の欄に年間の送金額を記入してください。
青色申告と白色申告とは、個人事業主が確定申告を行う際の種類の違いです。
青色申告者の場合、給与の支払いを受けていなければ控除を受けれますが、白色申告者の場合、控除を受けれません。
なお、個人事業を行っていなければ気にする必要はありません。
障害者、寡婦、寡夫又は勤労学生欄に記入する場合
控除を受けるには、下記の条件のうちいずれかを満たしている必要があります。
- 納税者か同一生計配偶者、扶養親族が障害者
- 納税者が寡婦、寡夫、勤労学生のいずれか
同一生計配偶者とは所得見積額が38万円以下の配偶者のことです。
扶養家族が障害者の場合、障害者手帳の種類や障害の等級などの事実を記入します。
寡婦、寡夫、勤労学生の場合にも現状についての詳細と所得の見積もり額を記入する必要があります。
他の所得者が控除を受ける扶養親族等欄に記入する場合
他の所得者が控除を受ける扶養親族等欄は、納税者以外の家族が扶養控除を申告するときに記入します。
扶養控除を申告する所得者についての情報を記入する必要があります。
住民税申告欄
16歳未満の扶養親族がいる場合のみ、住民税申告欄に記入します。
「あなたとの続柄」は納税者から見た続柄ですので、「子」や「甥」「姪」などと記入してください。
なお、16歳未満の扶養親族が海外に居住している場合は、「控除対象外国外扶養親族」の欄に〇を記入しましょう。
また、「所得の見積額」の欄は、扶養親族の所得見積額について記入します。
扶養控除申告書は税負担を軽くするために必要
扶養家族に変化がない場合でも、扶養控除申告書は毎年提出しなくてはなりません。
しかし、提出するだけで節税できるだけでなく確定申告の手間も節約できますので、面倒に思わずに提出しておきましょう。