「働き方改革」とは?背景や目的、企業の課題について詳しく解説
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「働き方改革」が叫ばれて久しいですが、実際にはどのような改革なのか、きちんと理解できていますか?
働き方改革とは何か、また、働き方改革が誕生した背景や目的、企業側の課題について分かりやすくまとめました。
目次
働き方改革とは
働き方改革とは、労働者が各自の事情に合わせて無理なく働けるようにするために国が推進している改革で、2019年4月1日から順次施行しています。
主に次の4つの改善や普及の実現を図ります。
- 労働条件の改善や労働時間の短縮
- 雇用形態にかかわらず従業員を公正にあつかうこと
- 就業形態の多様化
- 育児や介護、病気の治療などのプライベートな生活と仕事の両立
<参考:厚生労働省「働き方改革を知ろう!」>
働き方改革が必要となった背景
少子高齢化が進む日本において、今後ますます生産年齢人口は減っていきます。
日本国の生産力を衰えさせないためにも、働きたい人が働ける社会、そして、働きたいと思える社会をつくることは緊急課題です。
しかし、現状でも生産年齢人口に該当する人すべてが、働けているわけではありません。
育児や介護、自分自身の病気の治療などのために、働きたいけれど働けないというケースも少なくないのです。
たとえば短時間でも働ける職場が増えるなら、育児や介護などが忙しい方でも働けるようになります。
また、子どもが熱を出したときなどの急な事態が起こったときに「早退します」と言いやすい職場であることも、家庭生活に事情がある方が働きやすくなるためには欠かせません。
さまざまな人々のさまざまな事情に配慮し、すべての人にとって働きやすい環境をつくるために働き方改革が必要になっているのです。
働き方改革の3つの施策
2015年時点で、65歳以上の高齢者は人口の約1/4を占めていますが、今後はさらに高齢者の比率が増え、生産年齢人口が減っていくと考えられています。
働きたいと考えているすべての人が働ける社会、また、働きたいと思える社会をつくることは急務と言えるのです。
労働条件や労働環境を改善するための働き方改革は、具体的には次の3つの施策を掲げて施行されます。
<3つの施策>
- 長時間労働の是正
- 正規・非正規の不合理な処遇差の解消
- 多様な働き方の実現
働き方改革の施策1.長時間労働の是正
長時間労働による過労死が問題になっています。
心身ともに健康な状態で働き続けるためにも、労働基準法を遵守した適正な労働時間で働く必要があります。
また、会社での勤務時間が長くなくても、持ち帰り業務が多かったり、早朝や昼休み中に仕事をしなくてはならなかったりするのでは、適正な働き方とは言えません。
労働に従事する時間を短縮し、すべての人がプライベートの生活を充実させられるように働き方を改善していく必要があるのです。
近年は「時短ハラスメント」も問題になり、見かけ上の労働時間を短縮させるために仕事量が多くても残業できないようにしている職場があります。
本当の意味で労働時間を短縮するためには、仕事量や労務制度の見直し・管理から改革を始めなくてはいけないと言えるでしょう。
働き方改革の施策2.正規・非正規の不合理な処遇差の解消
育児や介護などの事情がある方でも働きやすい環境をつくるためには、アルバイトやパートなどの非正規雇用でも安心して働ける環境づくりが不可欠です。
しかし、実際のところは、会社の経営状態に合わせて非正規の人の雇用契約が簡単に打ち切られたり、有給休暇を取りにくかったりするなどの格差が見られる職場も少なくありません。
雇用形態の違いにかかわらず、公正な待遇が確保されることで、すべての労働者が働く意欲を維持できるように改革していく必要があるのです。
働き方改革の施策3.多様な働き方の実現
どのような働き方がベストなのかは、労働者一人ひとりによって異なります。
育児や介護、病気の治療をおこないながら働く方にとっては、労務時間の短縮や緊急事態が生じたときにすぐに相対できる環境が必要になるでしょう。
また、保育園に子どもを預けない場合や24時間介護が必要な家族がいる場合には、インターネットを使って自宅で働ける仕事(テレワーク)がベストになるかもしれません。
高齢者の就労についても、さらに柔軟に対応していく必要があります。
退職後もまだまだ元気で働く意欲にあふれている方も少なくなく、人材開発センターと企業が協力して高齢者の雇用をスムーズにすることも求められています。
働き方改革で企業が抱える課題とは
労働者個人が労働に対する意識を変えるだけでは、働き方改革は実現できません。
働く場である企業側が、積極的に働き方改革を推進していく必要があるのです。
まず日常的に長時間労働がおこなわれている職場では、労働時間の改善とそれに伴う仕事量・作業手順の見直しが求められます。
長時間労働がそもそもの仕事量の多さに起因する場合には、組織内の人事担当部署が率先して動き、新しく労働者を採用するなどの解決策が必要になります。
しかし、労働者を増やすと賃金が増加するため、会社としては生産性が下がり、利益縮小を起こしかねません。
その他にも、働き方改革をおこなうことで、一時的に会社の利益が減少するケースは多いでしょう。
また、働き方改革を進めていくうえで、社外との関係に摩擦が生じることもあります。
たとえば、今までは「24時間いつでもご連絡ください!すぐに対応します」ということをクライアントにアピールにしていた企業でも、働き方改革を導入することで24時間即対応ができなくなってしまう可能性があります。
企業ならではの魅力が失われることで、取引先が減る恐れもあるのです。
中小企業の働き方改革
政府の働き方改革の一環として、2019年4月以降、大企業において時間外労働の上限規制がおこなわれてきました。
従業員が多く資金が潤沢にある大企業では、働き方改革も実施しやすいと考えられています。
一方、従業員が少なく、一時的な収入減にも耐性が低い中小企業でも、2020年4月以降は時間外労働の上限規制が実施されることになります。
また、その他の分野でも、以下のように大企業よりも少し後から働き方改革の推進がおこなわれることになります。
<働き方改革の施行時期>
大企業 | 中小企業 | |
---|---|---|
時間外労働の上限規制 | 2019年4月から | 2020年4月から |
年次有給休暇の確実な取得 | 2019年4月から | 2019年4月から |
フレックスタイム制の拡充 | 2019年4月から | 2019年4月から |
産業医や産業保健機能の充実 | 2019年4月から | 2019年4月から |
雇用形態による不合理な待遇差の解消 | 2020年4月から | 2021年4月から |
企業の働き方改革の取り組みに注目
企業が働き方改革にどのように取り組んでいるかも、就職先や転職先を探すうえでの1つの指針になります。
働きやすい環境で快適に働くためにも、企業側が社員ファーストなのかについての情報に注目していきましょう。