デフレスパイラルとは?意味・仕組み・原因・社会への影響を解説
149 views

「デフレスパイラル」という言葉をニュースなどで聞いたことがあるでしょうか?
デフレは近年の日本経済が抱える悩みの1つで、失われた20年におちいった要因の1つとも言われています。
デフレスパイラルとはどんな意味で、原因や仕組みは何なのか、私たちが暮らす社会にはどのような影響を及ぼすのか解説します。
目次
デフレスパイラルとは
デフレスパイラルとは、デフレから抜け出せない経済状態を指します。
デフレとは『デフレーション』の略で、お金の価値が上がり、物やサービスの価値が下がる経済現象を意味します。
スパイラルとは連鎖的な変動という意味なので、「デフレから抜け出せず、悪化が続いている」という意味でデフレスパイラルと呼ばれます。
物の価値が下がると、経済的に良くない影響がいくつか出てきます。
この良くない影響が連鎖してさらにデフレが進み、デフレから抜け出せない状態のことを「デフレスパイラル」と言います。
デフレの対義語はインフレ
デフレの反対の意味を持つ対義語として「インフレ」という言葉があります。
インフレとは、インフレーションの略です。
デフレとは逆に、物の価値が上がって、お金の価値が下がっている現象のことを言います。
インフレ経済下では、どんどん物の価値が上がります。
すると「今」がいちばん物の価値が安いことになるので、消費者はいまのうちに買っておこうと考えます。
このようにインフレ経済下では、デフレ経済下とは逆に、物の消費活動が活発になる傾向があります。
デフレスパイラルの仕組み
デフレスパイラルは、消費者の購買意欲が下がって物が売れない状況を打開するため、さらに物の価値を下げようとすることで起こります。
デフレ経済下では、物の価値が下落し、お金の価値が高まります。
すると、消費者は物を消費するのではなく、お金を貯蓄しようと考えるようになり、市場の消費活動がおとなしくなる傾向があります。
市場の消費活動がおとなしくなると、物が売れなくなるので、事業者は需要の低下を受けてさらに価格を下げて売ろうとします。
すると、さらに物の価値が下がってお金の価値が高まり、デフレが加速して抜け出せなくなります。
デフレスパイラルの影響
デフレスパイラルが起こると、経済の成長が鈍化します。
日本でも、1990年移行はデフレスパイラルによって経済成長が鈍化し、以降20年は「失われた20年」とも言われています。
経済成長率の鈍化は、株価や失業率など他の問題への影響も大きく現れます。
一般的に、デフレスパイラルが起きると、以下のような社会問題が発生します。
- 消費減少:物やサービスが売れなくなる
- 物価下落:物やサービスを売るために、価格を下げる
- 企業収益減少:物やサービスの単価が減少し、利益も減少する
- 所得減少:利益が減少することで、従業員の給与も減少する
- 消費減少:各家計が節約し、個人の消費量が減少する
- 投資減少:利益が減少した企業は設備投資・新商品の開発などを控える
- 失業率増加:利益が減少した企業が人を採用しなくなり、場合によっては従業員の解雇する
- 国の支出増加:失業手当や生活保護費による支出が増加する
- 国の収入減少:所得税や消費税が少なくなり、税収が減少する
デフレスパイラルの原因
私たちの生活に、さまざまな悪影響を及ぼすデフレスパイラルですが、どのようなことが原因で起きるのでしょうか。
デフレスパイラルは、さまざまな要因が重なったり、連鎖反応を起こしたりして発生します。
デフレスパイラルは、以下に挙げる経済施策や経済状況によって起こるとされています。
- 消費税増税:買い控えが起こる(消費減少)
- 高金利:個人や企業は消費や投資を控える(投資減少)
- 公共投資の減少:公共投資を減らすと、流通通貨が減少する(消費減少)
- 社会保障の削減:年金などを減らすと、流通通貨が減少する(消費減少)
- 経済不安:経済の先行きが不安になると、投資や消費を控える(投資・消費減少)
デフレスパイラルへの対策
発生の原因も複雑で、悪影響も多い厄介なデフレスパイラルですが、デフレスパイラルを解消・抑制する対策にはどのようなものがあるのでしょうか。
デフレスパイラルへの対策としては、主に次の3つが挙げられます。
- 公共投資を増やす
- 金利を引き下げる
- 日銀の量的緩和を行う
それぞれどのような内容の施策で、デフレスパイラルに対してどのように作用するのか解説します。
デフレスパイラル対策1.公共投資
公共投資とは、建物や道路などの施工数を増やすことで、民間の建設会社などの受注数や売上を増加させ、民間に流通する貨幣量を増加させる経済施策です。
また、建設会社は、現場作業員など新たに働き手を雇う必要があるので、失業率低下にも役立ちます。
世の中に流れるお金の量が増えるので、物の価値が上がり、お金の価値が下がる効果があります。
新道路やオリンピック競技場、市営病院の建設なども公共投資に該当します。
デフレスパイラル対策2.金利引き下げ
金利引き下げとは、日銀や銀行がお金を貸す際の金利を引き下げる経済政策です。
金利が下がると、企業は融資を受けて新規ビジネスや事業拡大に取り組みやすくなり、雇用の流動性も高まるので、転職市場も活発になります。
消費者は、銀行にお金を預けていても金利が低いため利息がつかないので、消費したり企業の株などに投資したりするようになります。
金利引き下げの経済政策をすると、投資増加と消費増加の効果を得られます。
金利引き下げは金融緩和と言われることもあります。
デフレスパイラル対策3.日銀の量的緩和
量的緩和とは、金利を引き下げる金融緩和を上回るデフレ対策の金融政策です。
金利を下げすぎてこれ以上下げられなくなっても(ゼロ金利)、デフレが抑制されない場合、日銀は量的緩和を行います。
量的緩和は、単純にお金を刷る量を増やして、世の中に出回るお金の量を増やす経済政策です。
流通通貨をインフレ傾向にすることで、デフレから脱却することを狙っています。
ただし、日本だけが過剰にお金を刷っていると、世界経済から日本円の信用がなくなり、円の価値が低下してしまう恐れもあります(円安)。
デフレスパイラルから経済を読む
デフレスパイラルについて理解することは、近年の日本経済への理解にもつながります。
デフレスパイラルは、物の価値が減少し、お金の価値が上昇した状態から抜け出せない悪循環です。
デフレスパイラルが起きる原因とその対策について理解し、これまでとこれからの日本経済の動向を読み解いてみましょう。