子供7人に1人が貧困って本当!?日本の現状と対策
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日本では、子供7人に1人が相対的貧困状態にあります。
世界の中でも有数の先進国とされる日本で、なぜ子供の貧困が問題になっているのでしょうか。
子供を取り巻く現状と実施されている貧困対策について解説します。
目次
子供の貧困率
2015年の国民生活基礎調査によりますと、子供の相対的貧困率は15.6%で、7人に1人の子供が相対的貧困状態にいます。
ところで、子供の相対的貧困率が近年急に高くなったわけではありません。
2000年は15.3%、2009年は16.0%と、近年はコンスタントに6~7人の子供のうちの1人が相対的に貧困状態にあることが分かります。
<国民生活基礎調査における子供の相対的貧困率>
調査年 | 相対的貧困率 |
---|---|
2000年 | 15.3% |
2003年 | 14.9% |
2006年 | 15.7% |
2009年 | 16.0% |
2012年 | 16.1% |
2015年 | 15.6% |
相対的貧困と絶対的貧困
絶対的貧困とは、衣食住に欠く状態のことを指します。
たとえば、食べ物が手に入らず飢えているときや住む場所がない、あるいは住む場所が定まっていないとき、適切な衣類を定期的に入手できないときは、絶対的貧困状態にあると言えます。
一方、相対的貧困とは、社会や地域で「普通」とされていることができないことを指します。
例えば、スマートフォンが普及していない社会においては、スマートフォンを持っていないことは貧困を示す要素ではありません。
しかし、クラスのほとんどの子供が携帯電話やスマートフォンで連絡を取り合っているのに、金銭的事情から携帯電話やスマートフォンを買えないことは、相対的貧困状態です。
その他にも、金銭的事情から、高校に通えないことや修学旅行に行けないこと、家の中で静かに勉強できる場所を確保できないことも、相対的貧困状態と言えます。
食べるものがなくて飢えているわけではなくても、社会的に「普通」とされていることが金銭的な理由で実現できないことは相対的に貧困状態なのです。
子供が貧困になりやすい家庭
収入が低い家庭では、子供は相対的貧困状態に陥りやすいです。
とくに稼ぎ手となる大人が1人の家庭は、世帯収入が低くなりがちで、子供の相対的貧困率も高くなる傾向にあります。
シングルマザーの世帯では、家事や育児の負担を分担できないために、あえて収入の少ないパートタイムの仕事を選ぶこともあり、さらに低収入と貧困を招いています。
また、親がいない世帯や親が働かない(働けない)世帯で成人した姉や兄がきょうだいを養っている家庭や年収200万円以下のワーキングプアの家庭も、低収入かつ貧困状態に陥りやすいです。
<大人が1人の世帯の子供の相対的貧困率>
調査年 | 相対的貧困率 |
---|---|
2000年 | 58.2% |
2003年 | 58.7% |
2006年 | 54.3% |
2009年 | 50.8% |
2012年 | 54.6% |
2015年 | 50.8% |
子供の貧困がもたらすもの
社会で「普通」とされていることが経済的な事情からできない子供、つまり、相対的貧困状態にある子供は、世帯収入差がある社会ならどの社会でも存在します。
しかし、相対的貧困率が高いということは、その社会における経済格差が大きいということを意味します。
子供の貧困は、単にお金の問題だけではありません。
子供時代に貧困状態にあることで、将来的にも問題を抱えることになりかねないのです。
教育の機会の損失
金銭的な事情で高校や大学、専修学校などの高等教育を受けられないと、将来、就ける職業が限定されてしまう可能性があります。
とりわけ高給を期待できる職業には就けないことが多く、大人になっても経済的に困窮した状況が続く恐れもあるでしょう。
また、家族旅行や修学旅行に行けないことで、子供の経験が狭められてしまいます。
習い事をする機会がないことも、子供の経験を狭め、子供の可能性を閉ざしてしまうことにつながることがあります。
貧困の社会的連鎖
貧困は連鎖することが多いです。実際に、教育の機会があまり与えられなかったことで低収入の仕事に就き、自分自身の子供も貧困状態に陥ることは珍しいことではありません。
また、高収入の仕事に就くために奨学金を借りて進学すると、社会人になった後でも返済に追われ、子供に充分な資金を使えなくなることがあります。
将来的な税収減、公的インフラの切り下げ
相対的貧困は、さまざまな局面で表れます。教育の機会が充分に与えられないだけでなく、医療の機会や文化に触れる機会が減ることもあるでしょう。
また、「ほかの子供と同じような物や機会を持てない」ということが、子供に劣等感を植え付ける可能性もあります。
日本で相対的貧困状態にある子供が多いということは、将来的に貧困状態にある世帯が多くなるということでもあります。
個人収入の少なさは国家視点では税収入が減るということを意味し、公的インフラの充実が図りにくくなる恐れがあります。
子供の貧困対策
子供の相対的貧困をなくすことは、国力を増強させるためにも必要なことです。
充分な就学や教育の機会を与えられた子供が増えることで貧困の連鎖を断ち切り、税収の増加を見込めるでしょう。
国や自治体では、子供の貧困対策を実施しています。
例えばひとり親世帯などで収入が一定以下の場合は児童扶養手当を受けられます。
また、民間でも、次に紹介するような子供の貧困対策を実施しています。
子ども食堂
NPO法人などで、朝食や夕食の時間に親が食事を準備できない子供が利用できる「子ども食堂」を運営していることがあります。
欠食児童を減らすだけでなく、栄養バランスに配慮した食事を提供することで子供の健康状態の維持や改善も期待できます。
また、大勢で話しながら食べることで、子供の孤独感の軽減や社会性の向上といった心理的な効果もあります。
学習支援
経済的な理由から学習塾に行けない子供に無料で勉強を教える「無料学習塾」を提供している民間団体もあります。
静かに勉強できる場所を確保できない子供にとっても、自宅以外に勉強できる場所を持つことは重要なことです。
また、家庭の事情から学校に定期的に通えず、学習に遅れが見られる子供も少なくありません。
子供の貧困対策に取り組むNPO団体などでは、大学生や退職した教師などのボランティアを募集し、さまざまな事情で学校外での教育を受けられない子供に無料学習塾や無料家庭教師などの支援活動をしています。
子供の貧困対策は将来のために大切
子供の貧困は国や自治体、そして国民すべてが真剣に向き合わなくてはいけない問題です。
貧困は連鎖しやすく、とりわけシングルマザーなどのひとり親世帯は子供が相対的貧困状態になる傾向にあります。
よりよい未来を作るためにも、子供の貧困問題を身近な問題として捉え、情報に敏感であるようにしましょう。